「夏の屋久島でお会いしましょう」
おふたりと約束をしていました。
「届いた結婚指輪をつけて行きます」
ついに想いが叶った日。
夕暮れが静かに訪れ、熱帯の湿度があたりを満たしていました。
空港に到着し、車を手配したその足でアトリエまでお越しくださったおふたり。
「はじめまして」と挨拶をして、握手を交わしたのですが、
なんとなく、初めてお会いするような気がしない。笑
指輪が出来上がるまで、これまでずっと、本当にたくさんの言葉を交わしてきていたので、それもそうなのかもしれません。
「とてもいい感じです!」と、ほんの少し気恥ずかしそうに、指元にきらりと輝くリングを見せてくれました。
なんだか、三人で育ててきた花が咲いたような、心躍る瞬間でした。
お仕立てした結婚指輪は、お二人の出会いや重ねてきた時間をモチーフにしたデザインで、
そのストーリーを直接伺うことができたのも、嬉しかったです。
「今年作った中でも、とりわけこだわりがありました。」と、わたしも制作秘話のようなものをお話ししました。
気がつけば、窓の向こうは、すっかり暗くなっていました。
「明日は森を歩いて、その次の日にはシュノーケリングをする予定があるので、早く夕食に行かないとですね」
と楽しげに話しながら、おふたりとサヨナラをしました。
見上げると、丸い月が空に浮かび、夜空を驚くほどに明るく照らしていました。
うん、きっと明日も良くなる。
少しずつ、一歩ずつではあるけれど、
やわらかな光に包まれる未来が、たしかに続いているように思えた、
癒しに満ちたひとときでした。