
春の爽やかな日が続いている。
庭先には、一年ぶりの開花を迎えた白百合の香りが漂い、空は透き通るほどに青い。
緑も深まり、少しずつ熱帯の島特有の湿度を感じるようになってきたけれど、
梅雨入りを前にした、静かな季節を楽しんでいる。
屋久島は本土までは150キロほどの距離で、季節の巡りや植物、食べ物などにも、案外近しい雰囲気があったりする。
鹿児島市内に暮らすおふたりから結婚指輪作りのご相談をいただいたのは、島に一足早い桜が咲き始めた3月の初めのことだった。
6月のご入籍を目指し、これまでビデオ通話でデザイン作りを進めてきたのだけど、
同じ鹿児島というだけで、モニタ越しにも、なぜか近しさを感じてしまうのだから、不思議だ。
そろそろ、あちらでは枇杷の季節を迎える頃だろうか。
こちらと同じように、涼しい日が続いているのかもしれない。
海の向こうに思いを巡らせながら、ここ数日は指輪作りの準備を淡々と進めていた。
すべての段取りが整い、庭先に出て空を見上げると、昼の青に浮かぶ薄い月のシルエットを見ることができた。
5月のやわらかな風に乗って、その月を囲む雲がゆっくりと形を変えてゆく。
それは、新しい作業を始めるのに、とても素敵なタイミングであるように思えた。

おふたりのためにご用意したプラチナは、硬さの中に程よいしなやかさを持たせて配合した。
その両端をペンチで掴み、ねじりを加えていく。
均一な力を意識しながら、2本を同じシルエットに整えていく。
ここから先は、一度進むと後戻りすることのできない工程になる。
なめらかなラインが生まれるように、慎重にタッチを重ねていかなくてはならない。
長くジュエリーを作っていると、自分の手のわずかなクセのようなものも、自然と見えてくる。
その偏りをできるだけ生まないよう、途中でプラチナの左右を入れ替えながら、同じ工程を繰り返していった。

手を加えるたびに、プラチナは強さを宿していく。
ねじる工程を終え、リング状に整える頃には、それはずいぶんと硬く感じられた。
永遠と、祝福と。
かたちを持たない大切な想いが、手の中で、少しずつ輪郭を帯びていく。
海を越え、その喜びを分かち合っている。
巡りゆく島の季節の中で、こうして指輪が育まれゆくのだと思うと、
今この瞬間が、ひとつだけの温度を宿した、かけがえない時間のように感じられた。

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