
台風がもたらした高波の影響で途絶えていた流通が再開し、予定よりもずっと長い時間をかけて、イエローダイヤモンドがアトリエに届いた。
自然のリズムが人の暮らしよりも先にあることを感じるのは、島での生活ならではなのかもしれない。
台風が過ぎ去り、アトリエの周りでは、色とりどりのプルメリアが花を開かせている。
梅雨の大雨が河口へ運んだ砂も、高波によって、すべて押し戻された。
昼間の空はどこまでも青く、夜には天の川を見ることができる。
今は、揺るぎのない夏の時間が流れている。
季節の移ろいの中で、ジュエリーが育まれてゆく時間を分かち合えることもまた、オーダーメイドの楽しみの一つなのではないだろうか。
おふたりの大切なご婚約の日に向けて、島に咲く黄色い花をモチーフにした指輪を作っている。
冬を前に、少しずつ寒さが増してくる頃に咲き始めるツワブキの花。
その明るい黄色に、いつも元気をもらっている。
本当に不思議なことだけれど、もしかすると、当たり前のことなのかもしれない。
花の色や個性と響き合う石に、いつも出会うことができる。
ツワブキの明るい黄色には、透明感を纏ったイエローサファイアや、イエローダイヤモンドがよく似合う。
今回はご婚約のジュエリーということもあり、
彼と相談を重ね、イエローダイヤモンドを使うことにした。

さっそく、ワクワクしながらルーペで覗き込む。
濃く鮮やかな黄色と、高い透明感。
わずか2.3mmの小さな姿の中に、まっすぐな強さが宿っているように見えた。
シャープに整えられたカットの一つひとつから、繊細な光が放たれていた。

リングの造形作業も、石との出会いを待ち望んでいたかのように、いよいよ佳境を迎えている。
プラチナの花とイエローゴールドのリングをぴたりと組み合わせ、そのわずかな隙間へ、融点の低いゴールドを流し込んでいく。
ガスバーナーの炎でリングを包み、徐々に温度を上げていく。
途中、花とリングの角度がずれ、そのたびに火を止め、何度か調整を加えた。
造形と温度のバランスが整ったところで、さらに熱を加えていく。
ふたつの金属が接する部分に、ほんの少しだけ強く火を当てると、
その瞬間、ゴールドがすっと溶け、隙間の奥へと流れ込んだ。
緊張感に満ちた時間ではあったが、うまくできたように思う。
ここで初めて、お花リングのシルエットが立ち上がった。
まるで本当に、ずっと育ててきた花が咲いたようで、あたたかな喜びが込み上げてきた。
その佇まいは、どこまでも繊細だ。
けれど手に取ると、小さな姿の中に、確かな強さが感じられる。
作業は、ひとつの峠を越えたといったところだ。

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