
夕暮れの時刻が、少しずつ遅くなってきている。
午後6時を過ぎても、西の空はまだ、ほのかに明るい。
これも、島に訪れた春からの贈り物なのかもしれない。
そう思うと、なんだか幸運に恵まれたような気持ちになり、海の見える丘まで車を走らせ、久しぶりにサンセットを眺めていた。
海を眺めると、ちょうど山の向こうへ太陽が沈む頃合いだったようで、空がオレンジ色のグラデーションを描いていた。
色彩の移ろいは、刹那の出来事でありながら、永遠に触れているかのような静けさを湛えている。
まるで花が咲き連なるように、時間が重なり、やわらかく彩られてゆく。
ほんの数分だったのだろうか。あるいは、もっと長い時間だったのかもしれない。
気がつけば、あたりはずいぶんと暗くなってきていた。
そろそろアトリエに戻り、作業の続きを進めていかなくては。
遠くの方から、冷たい海風が漂ってきた。
長く下準備を続けてきた工程を経て、アトリエではいよいよ本格的な造形作業に入ることになった。

立体的なフォルムに鋳造したプラチナとシャンパンゴールドを、ぴたりと合わせていく。
バーナーの炎に包み、1000度近くまで地金の温度を上げたところで、その隙間へ融点の低いゴールドをすっと流し込んでいく。
重ね合わせた金属同士がずれてしまわないように、温度を上げすぎて溶けてしまわないように、細心の注意を払いながら、慎重にタッチを重ねていく。
序盤から立ちはだかる難所ではあるが、道は確かに見えていたように思う。
まず彼女のリングを無事につなぎ終え、そのまま間を置かず彼のリングに取り掛かる。
風を切り走りながらバトンを渡すように、交互に同じ工程を繰り返していく。

溶接作業を無事に終え、リングの表面を紙やすりでざっと削り整えると、そこに二つの色が現れた。
シャンパンゴールドが側面から内側を形づくり、
表面から側面へと連なる部分は、プラチナが担っている。
その佇まいからは、揺るがない落ち着きのようなものが感じられる。
素性の異なるふたつの素材を、うまくつなぎ合わせることができたように思う。
仕上がりの美しさと、暮らしに寄り添う強さを左右する大切な工程を無事に終え、ほっと肩を撫で下ろしていた。

海からの帰り道、空に白い月を見つけた。
車を走らせるたびに、月は大きくなったり、小さくなったりする。
海で眺めたサンセットもそうだけれど、場所や時間が変わるだけで、光は実に豊かな表情を見せてくれる。
それが興味深く、いつも夢中になってしまう。
ジュエリーづくりのインスピレーションは、すべてここにあるように思う。
おふたりの結婚指輪が、いつも新鮮な喜びを、日々の暮らしに添えてくれるものになれば、どれだけ素敵なことだろうと思う。















