屋久島サウスのアトリエです。
お二人の結婚指輪作りが始まって、周りにあるものはシャンパンゴールドのリングといくつかの工具、そして島の季節だけになった。
作業が続く間は出来るだけ暮らしをシンプルにしなくてはならない。
シャンパンゴールドが大好きなお二人とはなかなか気が合うのだと思う。
海を越えて離れているけれど近しい仲間がいるような気がして嬉しい。
お二人の結婚指輪は素材もデザインもぴたりと同じにお作りするのだけれど、
彼と彼女が気に入ってくれたデザインはとてもシンプルなものだったので、リングの幅や細部の造形によって変わる印象を大切に作業したいところだ。
それぞれの手に、ライフスタイルに寄り添うそれぞれの採寸と造形が要になってくる。
さて、
今日もできることを。
くるりと丸くしたシャンパンゴールドは炎の中で約900度まで温度を上昇させてその両端をつなぎ合わせる。
薄暗くした作業台の上でリングは熱を帯びて真っ赤に浮かび上がる。
今まで何度も行ってきているはずではあるけれど、いまだに背筋が伸びる作業かもしれない。
温度は低すぎると接続が甘くなるし、高すぎると金属が溶けてしまうからだ。
真っ赤になった後も少しの間粘り強く炎を当て続けると、やがてシャンパンゴールドは一つのリングになり、何よりも強く安定したものに変わったことがわかった。
ずっと長くお使いいただく結婚指輪だから、ここはしっかりと、大切にしたいところである。
島はまだまだ暑い日が続きそうだけど、ときおり空にはうろこ雲を見ることもある。
ずっと遠くを眺めていると集中でキュッとなった心がふわりと和らぐのがわかった。
金槌で叩きながらリングの造形を整えておく。
圧力を与えてゴールド強度を上げておく。
コンコン、コン、と金属音がアトリエに響く。
手作業の音がなんとも心地よいな、と思う。
はるか昔からずっと変わらない手作業だ。
あるいは中世ヨーロッパの工房でも、大正時代に日本の工房でも、同じ音に包まれていたのかもしれれない。
ジュエリーと工具と、ときどき風の音も聴こえる。
何気ないいつもの時間ではあるかもしれない。
けれども、そこから確かに何かが生み出されようとしているのだと考えると、
お二人と分かち合う指輪作りの時間がとても愛おしく、特別なもののように思えた。
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