
今年30個目となる台風が島に近づいてきた頃だった。
アトリエは真夏のような暑さに包まれ、澄み渡る空には眩しい光が溢れていた。
一年ぶりに帰ってきた渡り鳥もこの陽気に驚いたかもしれない。
庭先には秋の花が咲き、馴染みの顔ぶれにも会うことができる。
毎年同じリズムを繰り返しているはずなのに、季節がいつも新鮮に感じられるのはなぜだろう。
20年前と変わらない屋久島の空を、初めて見た時と同じ感動を抱きながら眺めていた。

みずみずしい緑の中で眺めた、ふた粒のダイヤモンド。
庭先に差し込み始めた陽光を受けて、静かに輝いていた。
おふたりの大切な婚約指輪作りが始まる、とても素敵な朝だった。
今回のダイヤモンドは、日々の暮らしにさりげなく馴染むよう、透明感が高く、いつもよりほんの少しだけ小ぶりのものを選んだ。
これまで彼と一緒に相談を重ねながら生み出してきたイメージが、いよいよ形になっていく。
おふたりの大切な想いが、ひとつの指輪へと育まれてゆく。

世界の色彩を映し出すダイヤモンドの澄んだ輝きは、花に宿る雨の雫に似ているように思う。

机に向かい、イエローゴールドの花をかたどる作業に取り掛かる。
5mmほどの、とても小さな花だ。
ダイヤモンドと対になるよう、ふたつ用意した。
ダイヤモンドの輝きは、ひとつとして同じものはないが、
こうして手仕事で作り上げていく金属もまた、かけがえのないものであるように思う。
まるで巡りゆく季節のように、出来上がるジュエリーがいつも新鮮に感じられるのは、イエローゴールドやダイヤモンドが、きっとこの大地から生まれた純粋な素材だからだろう。

指輪作りをやさしく見守っていてくれる屋久島に、ありがとう。
おふたりの新しい日々に寄り添うリングの姿を、咲いたばかりの花を眺めている時のような、あたたかで幸せな気持ちで思い描きながら。
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