夜の間にしとしと雨が降り、朝靄のかかる日が続いている。
湿度を帯びた白いベールは山々の合間を足早に駆け抜けていく。その変化する表情がなんとも情緒深い。
早朝の美しさに気づいたのは、この島に暮らし始めてからなのかもしれない。
28年前、お二人は新婚旅行で屋久島を訪れました。
素敵なご縁に紡がれる結婚指輪づくり。
島で眺める山々はずっと変わらないはずなのに、いつも新しく感じられるのが、とても面白い。
山々の合間を通り過ぎる霧のように、それを見つめる自分自身の心も、いつも足速な変化を続けている。
変わらないものがそこにあるからこそ、内側にある変化に気がつくことができるのかもしれない。
28年の時がもたらす、変わるもの、そして変わらずそこにあるもの。
お二人の物語に想いを巡らせながら、今日も作業机に向かっている。
くるりとリング状に巻いたシャンパンゴールドをバーナーの炎に包み、およそ900度まで温度を上昇させ、その両端をつなぎ合わせる。
温度が高くなりすぎるとゴールドが溶けてしまうし、低すぎると接合が甘くなる。
とてもシンプルではあるけれど、火を扱うタイミングが重要な作業だ。
こうして金属と対峙していると、時折、それらがまるで呼吸をしているように思えることがある。
硬いはずなのに柔らかで、静物であるのに、そこに力強い動きを感じずにはいられない。
リングになったシャンパンゴールドは、そのバランスを整え、強度を高くする。
そう考えてみると、ある意味でリングもまた、屋久島の山々と同じように、“変わらないもの”の一つであるのかもしれない。
大切な記憶は時と共に育まれていく。
お二人の暮らしに長く寄り添う結婚指輪だ。しっかりと丈夫に作り上げていかなくてはならない。
1日の終わりに、ガラス製のシャーレの中に収めたリングを眺めてみる。
金属片が散らばり、いくつかのタッチを加えた痕跡が残っている。
ほんの少しずつではあるけれど、小さな息吹がそこに宿り始めているのを感じ取ることができた。
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