気がつけば、島全体がうっすらとした霞に覆われている。
目に映る全てが、ふわりと優しい。
いつもの散歩道で満開になった河津桜の下に佇み、のんびりと見上げていると、風に舞う花びらが淡い色彩を持って、心を癒してくれた。
毎年のことではあるけれど、やはり桜が咲くと、どこか特別な気持ちに包まれる。
卒業式や入学式の節目とも結びついているし、花見もある。
この儚い美しさが好きで、日本に暮らしていると、その時の流れがとてもしっくりとくるのかもしれない。
お二人が暮らす国は南半球にあるので、桜の開花は半年ほど先になるのかな。
春の木漏れ日の中、プラチナとシャンパンゴールドを眺めながら、海のずっとずっと向こうを想う。
植物たちに鼓動を感じ、大切なシンボルのように思うことのできる暮らしは、とても幸せなのかもしれない。
静かに、そしてダイナミックに移ろいゆく島の時間に歩調を合わせながら、お二人の結婚指輪を作っていこう。
アトリエまで歩いて戻り、まだ桜の余韻が残る中、さっそくリング作りに取り掛かる。
彼女のシャンパンゴールドを酸素トーチの炎に包み、柔らかく焼きなましてから、金槌を使い、その厚みに強弱をつけていく。
コンコン、コン。金属が合わさる音がアトリエに響く。
窓からは春の明るい日差しが降り注いでいる。
リング幅は2.0mmと1.6mm
目標の寸法を目指し、注意深く、そしてリズムよく金槌を打ち続けていく。
ずっと向こうから微かに聞こえてくる海の音を感じることができる。
新しい風が吹きはじめた海に、そっと船を浮かべて漕ぎ出すように、
わたしたちの指輪作りは、静かな始まりを迎えた。
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