
夜明けの空がオレンジ色に染まるようになりました。
山から吹き下ろす風が、この時間帯はひんやりと冷たい。
まだ暗いうちは力強い色彩のグラデーションを見せていた空が、やがて日が昇るとふわりとやわらかくなっていく。
島からの贈り物のような時間を体いっぱいで受け取って、一日を始めました。
屋久島は丸く小さな島なので、東の海から昇る朝日も、西の海に沈む夕日も眺めることができるのが、ちょっと得した気分です。
おふたりが島を訪れる頃にはどんな空が広がっているだろう。
少し先の未来に心を弾ませながら、結婚指輪を作っています。

アトリエでは2本のプラチナリングの削り出し作業を無事に終え、次の工程へと進んだところです。
ここで改めてリングを酸素トーチの炎に包み、焼き鈍していきます。
こうしておくと、次の加工がとてもスムーズになるのです。
オレンジ色に染まるプラチナがとても綺麗で思わず見入ってしまうのは、いつものことかもしれません。
1000度を超える高温にも耐えられる、その頼もしさもまた、プラチナの魅力の一つなのだと思います。

「リングにはごく緩いカーブをつけて仕上げましょう。」
おふたりと相談を重ねて生まれたイメージが、いま手の中で形になっていきます。
鉄の枠にリングを添わせ、木槌で叩いていきます。
コンコンコンと、昔ながらの音がアトリエに響きます。
少しずつリングがやわらかな曲線を帯びてきました。
ブラインド越しに11月の爽やかな光が差し込み、部屋全体を白く明るくしています。
いよいよ作業も折り返し地点に差し掛かりました。
なんだか少しだけ名残惜しい気持ちも感じながら、、指輪作りの日々は和やかに過ぎていくのでありました。

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制作編