屋久島サウスのアトリエです。
夏がもう少し続いてほしい、と思った。
彼女のリングの造形作業を進める朝に、窓の向こうに漂う入道雲を眺めて。
海にもよく通ったし、ノースで眺めた朝日も感動的だった。シロクマもよく食べた。
お二人の結婚指輪作りはこの夏とともにある。
日中の暑さは半端なくて、台風で船も止まったりするけれど、この島に暮らすようになってからは夏がとても大切なものになっている。
「八月も後半だよね」と友人とLINEで話していたりすると、時を細かく刻みたくなってくるのも毎年のことかもしれない。
今日も一つ一つのタッチを大切に。
彼女のリングは1.8mm幅ととても細いスタイルであるので、指先に意識を全ての集中しなければならなかった。キャンバスに細い筆でサインを描くように丁寧に。
数時間ほどだっただろうか。
やがてプラチナリングの表面には柔らかなカーブが現れてきた。
一呼吸を置いてリングを眺める。
うん、いい具合だ。
まだまだ作業の始まりではあったけれど、彼のリングとお揃いのラウンドシェイプから伝わってくるとても繊細な雰囲気を感じ取ることができた。
表面をつるりと磨き上げたところでまた火にかける。
これから更なるタッチを加えることができるように、プラチナを柔らかくしておきたかったからだ。
暗がりの中に真っ赤な円が浮き上がる。
炎の中でリングはリング自身に抱いていた緊張を解いていく。
その様子を眺めて心が静かになっていく。
夕暮れ時には庭先で長い時間空を見上げた。
夏も冬も、夜だって、屋久島の空を眺めるのが好きだ。
気がつくと日も少し短くなっている。
涼しさも戻ってきているのかもしれない。
それでもなお、とても長い一日だったように思う。
アトリエに戻り、まだ光が入り込むうちにリングにラストタッチを加えることにした。
屋久島を感じてふわりと和らいで、そしてまたジュエリー作りができる喜び。
下準備を終えたリングには金型を当てて木槌を使ってコンコンと叩いたり、サイズがぴたりと合うように微妙な調整を加えたり、そのアウトラインに変化を与えていった。
こうしてリングが理想の形に少しずつ近づいてくるの前にすると、お二人とご一緒したデザイン作りの時間が蘇ってくる。
繊細さと、確かさと、小さな光を纏うように。
これがお二人の結婚指輪の印象だ。
そこには永遠の輝きがあらなくてはならない。
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