2024年、夏の始まりは、屋久島で出会った友人に届ける結婚指輪を作っている。
朝のまだ薄暗い時間から作業を始め、暑くなると少し長い休憩をとり、夕暮れ時になるとまた作業を再開するのは、南国ならではのリズムかもしれない。
作業机にはプラチナが置かれ、窓の向こうに時折入道雲を眺めながらタッチを積み重ねていく。
日本の夏は抒情的というか、
花火や浴衣、ラムネ、みたいな、
独特の儚い風情も好きだ。
プラチナリングに波のリズム。
屋久島の海と、お二人との素敵な出会いにありがとう。
子供の頃には夏休みがあったからだろうか。
7月に入ると、日々を数えるように、愛おしく過ごすのが、いまだに暮らしの中で習慣になっているようにも思う。
2024年の夏、一度だけの指輪作りである。
積み重ね、育むように、一つ一つの時を大切に思いながら。
さて、今日も作っている。
酸素トーチの炎に包み、その両端をつなぎ合わせたプラチナは、リングになったところで金槌で叩いていく。
表面を、側面を、均一に圧力をかけるように、細かく何度もタッチを繰り返した。
コンコンコン。
実のところ、表には見えないところの作業ではあるのだけれど、ここはしっかりと手を加えておきたかった。
金槌で叩き、圧縮をすることによって、プラチナが硬くなってくれるからだ。
作業は少しずつ完了に近くづいてゆくが、同時に、指輪にとってはその始まりが近づいてくる。
それは何十年もの時をお二人と共にする長い道のりの始まりであるから、できる限りの準備を整えておきたい。
作業の合間には遠くを眺めておく。
鹿児島といえば! 白くまさん!
気がつけば、島に暮らして15年ほど経って、鹿児島風味にすっかりハマっている感があるなあ。
2本のリングとも、コンコンと叩き作業を終えると、表面に凸凹のテクスチャーが現れた。
デスクライトの光の下で眺めると、プラチナのどこか艶かしい表情が胸に響いた。
金属の好きなところは、広い大地のかけらのような存在であることかもしれない。
海や山々と同じように、奇跡的に美しい。
目の前で少しずつ息吹を帯びてゆく、その小さなプラチナリングを、
しばらくの間静かに眺めていた。
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