2024年の始まりはうららかな陽光に包まれて、屋久島に暮らすお二人の結婚指輪を作っている。
暖かくて静かな冬が制作に没頭できる季節なのだと思う。
お二人はどんな年始を過ごしているのだろう。
車で20分ほど走ると会う事ができる、同じ時間を感じながら指輪作りができるのは屋久島ならではのオーダーメイドだと思う。
およそ仲の良いパートナー同士がそうであるように、お二人のデザインに対するお好みも、とても息の合ったものだった。
お二人とは秋のアトリエで相談会をしたのだけれど、
彼はプラチナで、彼女はピンクゴールドで、すっきりと細身のスクエアシェイプのデザインを、まるで最初からそう決まっていたみたいにお二人とも気に入ってくれたのが印象的だった。
リング幅も同じにして、男女で大きくデザインを変えないのが今どきで素敵だなと思う。
あともう一つ、リングの厚みをできるだけ抑えてすっきりと仕上げるのも大切なところ。
シンプルで普遍的なスタイルではあるけれど、お二人の暮らしに寄り添うように、作業の要所要所で細やかなアレンジを加えていかなくてはならない。
スクエアシェイプを柔らかに。すっきりと細いリングをしっかりと丈夫に。
アトリエでご一緒した時間や、車で20分ほどの場所にあるカフェでお会いするお二人を想いながら。
細いピンクゴールドとプラチナは鉄の芯金に当てて、木槌でコンコンと叩き、くるりと巻いてリング状にした。
この時点ではフォルムはまだ大ぶりな無骨さを帯びていて、手触りは柔らかい。
窓越しに太陽の光の下で眺めると、ピンクゴールドとプラチナが抱いている輝きの兆しのようなものを確かに感じる事ができた。
作業の合間には庭先に咲いた1月のハイビスカスを眺めた。
これはなんでも暖かすぎるのではないだろうか、と少し心配になってしまうのも、よく考えてみると毎年のことなのかもしれない。
1月7日は島では“鬼火焚き”という厄祓いの行事が行われる日でもあって、本格的な寒さが訪れるのはちょうどその後からだったように覚えている。
ピンクゴールドのリングはふわりとした炎に包んでリングの両端をつなぎ合わせる。
作業温度は約820度である。
こうし両端をしっかりとつなぎ合わせると、リングは安定を得てとても強くなる。
これまで何度も行ってきた作業ではあるけれど、その過程は不思議で面白く、一つ一つのタッチに夢中になってしまう。
プラチナの作業温度は約1400度なので目には遮光のサングラスをかけなければならない。
リングが真っ赤になったところで、酸素トーチの温度をさらに上げてつなぎ目にほんの少しだけ融点の低いプラチナを溶かし入れる。
眩しい光の中に、つなぎ目が合わさり一つになるのがわかる。
うまくいった!と安堵の気持ちが込み上げながらトーチを消すと、アトリエがさっきまでよりもずっと静かに感じられた。
お二人のリングはすっきりと細身のデザインなので、さらに強くなるような加工を施して行くのだけれど、今日はここまでにしよう。
日暮れ前に庭先に出て見上げた空のグラデーションがむっちゃ綺麗だった!
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