くるりとリングになったプラチナとピンクゴールドは金槌でその表面を丁寧に叩いてあげるとその組成をキュッと引き締めた。
コンコンコンと強く何度も繰り返す。
それに応えるように金属もかちりと硬く、強くなる。
その感触が手から伝わってくる。
窓の向こうからはぽつりぽつり雨の音が聞こえてくる。
屋久島サウスは久しぶりに雨降りだった。
冷たい冬の雨に包まれた一日だった。
屋久島の友人にお届けする結婚指輪作りは、プラチナとピンクゴールドをくるりとして炎に包んでリングにするところまでを書きました。
雨の日のジュエリー作りが好きだ。
しとしと雨音に心癒されながら、作業机に向かって手を動かすのは何よりも幸せなひと時かもしれない。
空気の中に漂う神秘のようなものに魅せられている。
同じ島に暮らすお二人も、あるいはそうなのかもしれない。
形や言葉を持たない事象ではあるのだけれど、
島で感じている大切な何かを分かち合う事ができる仲間がいるような気がして嬉しい。
さて、指輪作りは下拵えが終わったというところだろうか。
これからがいよいよ本格的な造形作業に入っていく。
スクエアシェイプのリングはシャープにすっきりと、そして同時に有機的に、手触り柔らかく仕上げたい。
ゴールドとプラチナが持つ大地の響きがここにある。
まずは彼女のピンクゴールドから。
リングの表面には「フラットであるように見えるけれど実は」というくらい極緩やかなカーブをつけていくことにした。
柔らかなつけ心地もそうだけれど、出来るだけ面に角度を設けて光の巡りを良くしたかったからだ。
指に当たるリングの内側を思い切って大きくラウンドさせたので、完全な平面は側面だけということになるのか。
ずっと長くお使いいただく結婚指輪なので、実はこのつけ心地の部分が一番大切にしたいところ。
横から見る造形もすっきりと薄く仕上がってきたし、中央にはしっかりと厚みを残す事ができた。
それにしてもピンクゴールドの輝きにはいつも魅せられてしまう。
鉄鋼ヤスリで削り落とした金属片の生々しさがとても綺麗だなと思う。
夕暮れ時には雨が上がったようで、山サイドを眺めると夕焼けに染まった雲がぐるぐるしていたワンシーン。
今日も屋久島にありがとう。
静かな冬の日が何気なく過ぎていく。
明日もきっと良くなると思う。
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