
深い森を流れる清らかな水のように、光はどこまでも澄み切っている。
数日に一度、北の海から吹きつける風は、ひんやりと冷たい。
島にもようやく冬の気配が漂い始めたのだろうか。
気がつけば、12月がもうすぐそこまで近づいていた。
庭先に咲いたブーゲンビリア、夕暮れ時に眺める空。
南国を鮮やかに包み込む季節のグラデーションに、今年もまた出会えた喜びを胸に、作業机に向かっていた。

イエローゴールドとプラチナを組み合わせ、そこに一つの新しい色彩を生み出すようにして、おふたりの結婚指輪を作り進めている。
二つの金属が混ざり合って見えるよう、接合する面を波うつ複雑な形状に仕立てた。
何度も細やかな調整を重ね、それぞれがぴたりと合わさるように整えておく。
ここまでが、大切な下準備といったところだろうか。
そして、リングをガスバーナーの炎に包み、温度を900度近くまで引き上げていく。
十分に熱が回ったところで、プラチナとゴールドのわずかな隙間に、融点の低いゴールドをスッと流し込む。
しっかりと熱が回り、かつ金属が溶けてしまわないよう、狭い温度域を保ち続けなくてはならない。

作業の前半にして、最も大切な工程を無事に終えることができ、ほっと一息。
思い描いていた通りに、二つの金属を組み合わせることができたように思う。
ゴールドとプラチナは、7:3の比率になるよう量を調整した。
今はまだ、それぞれの金属が独立したままの姿に見える。
このふたつがひとつになるように、これから表面を削り出していく。
それにしても、異なる何かが出会うところには、水彩絵の具が混ざり合い、新しい色が生まれる瞬間のような、新鮮な感動がある。
プラチナとイエローゴールドもそうだし、秋と冬もそうだろう。
海と空が出会う場所。昼と夜が交差する時間。
その美しき移ろいの時を、大切な誰かと分かち合いたくなる。
そうすることができれば、私たちの日々はきっと喜びに包まれる。
小さくて静かな佇まいだけれど、ひだまりのように安らかなぬくもりが満ちている、そのようなリングになればいいと思う。
一日の作業がひと段落する頃、窓の向こうには三日月が輝き始めていた。
静かな気持ちに包まれながら、机の上にあるその小さな息吹のようなものを、どこか愛おしい思いで眺めていた。
