屋久島サウスには一年ぶりにの夏の気配が訪れて、南国独特の賑やかなムードが世界を覆い尽くしつつある。
アトリエの生垣にはハイビスカスがたくさん咲き、白とオレンジ色をしたチョウチョも集まってきた。
移ろう島の季節に寄り添いながら、お二人とオーダーメイドの日々を一緒に励んできた。
いよいよ制作が始まって、気がつくとお二人にアトリエでお会いしてから3ヶ月が過ぎていた。
もしかすると、何年も経ってから思い出すかもしれない。
「あのとき、島でアトリエでデザインのことや暮らしのことを話したよね」と。
お会いするまでの時間だったり、デザイン作りだったり、LINEで交わす会話も。
ジュエリーのオーダーメイドでは、それが出来上がるまでのいろいろもまたかけがえのない時間だと思う。
たしかに形あるリングを美しく仕上げる作業ではあるけれど、
一度だけのこの道のりもまた大切に思いながら。
さて、
今日も作っている。
プラチナの塊のようだったリングにはヤスリをかけて必要な部分だけを残し、その周りを削ぎ落としていく。
そのような作業を何度も繰り返していくと、とこんなにもすっきりとしたフォルムが現れた。
削り途中のプラチナには土を感じさせる有機的で柔らかな雰囲気があるけれど、手の中にあるフィーリングはとても硬くて心強い。
繊細なリングを硬くするために配合を整えたプラチナなのである。
これから造形を重ねてフォルムに柔らかさを与えるために、もう一度酸素トーチの炎に包んでプラチナを柔らかく作業しやすい状態にしなくてはならない。様々な加工を経て張り詰めた緊張を解くように。
そして、1日の終わりに。
造形のひと段落した彼女のリングをハイビスカスの下で眺める。
彼女のリングには太いところと細いところがある。
そのアウトラインは緩やかで大きなカーブを描いていて、さらにリングの表面にはそのカーブに重なり合うようにもう一つのカーブが、造形による斜面の接点が連なるように描かれている。
小さなリングの中に巡り、重なり合う。
そのリズムはいつもの屋久島の暮らしの中で感じている響きのようなものであると思う。
潮の満ち引きと月の満ち欠けも、季節の巡りも、雨降りだったり、草花や鳥、水もそうかもしれない。
絶妙なバランスをとりながら密接に関わっている、
私たちも含むすべての時間のようなものについて思いを巡らせている。
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