結婚指輪のオーダーメイドは数ヶ月に及ぶじっくりとした制作ではあるけれど、お二人とは一期一会というか、一度だけの時間をご一緒することになる。
お二人の指輪作りで作業机に向かっていたのは、島に色鮮やかな若葉が広がっていく新緑の時期であった。
日に日に立体感を得る山々の賑わいがワクワクで、作業の合間に窓の向こうをよく眺めていたのを覚えている。
わたし自身にとっては、そのような時間を経て手の中で育まれる指輪もまた、まるで海を渡る雛鳥のようにやがてここを通り過ぎていく存在なのかもしれない。
造形のひと段落をした彼のリングは私のサイズよりも少し大きかったので、実際に薬指に合わせることができた。
窓際に届く光にそっと翳してみる。
夕暮れ時の緑が深い。
マット仕上げを施したばかりのプラチナリングが静かに輝いている。
わたしもしっかりとした手をしている方なので、リング幅2.5mmはとてもしっくりとくる。
すっきりと手の中で収まりがよく、同時にプラチナの確かな重みを感じることができた。
楽しくなってきて、時々ファインダー越しのピントを外したり合わせたりして遊ぶ。
島の緑に響き合うように輝きを放つプラチナリングを眺めていたら、まるで小さな光の輪を纏っているように感じられた。
さて、束の間のふれあいである。本当に!
これからお二人の結婚指輪は内側の彫刻作業を経て、いよいよ完成を迎えることに。
お二人のご結婚をお祝いするパーティーの日がすぐその後に控えている。
あとワンアクションは島の外で作業することになるけれど、少しの余裕を持ってここまで辿り着くことができたように思う。
ほっと一息をついたのと同時にまた次の準備に取り掛からないといけない。
ある意味においては、指輪作りは出会いを重ねながら前に進んでゆく旅のようでもあると思う。
素晴らしい時間にありがとう!
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制作編