屋久島サウスに、夏の白い百合が咲き始めている。
散歩道や、車窓の向こうにふと目にする、ゆらゆらと揺れるその佇まいは、繊細で、凛々しい。
ここのところ、いくつかの台風が同時に島に近づいてきた影響で、雨の多い日が続いているけれど、それでも時折訪れる晴れ間を見つけては散歩に出かけ、その白い百合を楽しく眺めていた。
植物というのは、本当に不思議なもので、毎年同じ時期に、同じ場所で、同じ花に出会うわけだけど、
いつも変わらず、あるいはいつも以上に心を躍らせてしまう。
とくにこの島に暮らすようになってからは、植物たちと触れ合う時間がとても多くなり、それにつれて、同じような気持ちを分かち合える人との繋がりも自然と多くなったように思う。
お二人は、今どんな花を眺めているのだろう。
海のずっとずっと向こうに、何気なく思いを巡らせていた。
シダの葉は、もしかすると、屋久島を訪れて一番最初に好きになった植物かもしれない。
森を歩き、ふわりと手に触れたその葉の その生き生きとした緑色と精巧さに感動した時のことを、今でも鮮明に覚えている。
フラクタル係数的な細やかな世界観に夢中になったかと思えば、なかには、自分の背丈よりも大きな葉っぱもあって、その多様性にも驚かされた。
この葉っぱを摘んで、身に纏うことができればどんなに素敵だろう。
そう思ったのは、とても自然なことだったように思う。
さて、アトリエです。
プラチナでかたどったシダの葉は、まさに、実物と同じくらいの大きさだった。
糸鋸で輪郭を切り出し、精密ヤスリでその輪郭を整えていく。
数日間にわたる、とても繊細な作業だったけれど、それがようやくひと段落したところだ。
とても静かでシックな作業ではあったけれど、コツコツと積み重ねるその時間は、植物たちの歩みに似ているのかもしれない。
地道な日々の行いが、やがてダイナミックな変化や美しさをもたらせてくれる。
いつも身近にある植物たちの時間に習うように、ひとつひとつのタッチを丁寧に重ねていく。
葉の中央に走る茎の部分は、イエローゴールドで作ることにした。
リングにもなる細いイエローゴールドを、プラチナの葉っぱと組み合わせていくこの工程は、早くもこの指輪作りのクライマックスとなるだろう。
窓の向こうからは、ざあざあと激しい雨音が聞こえてきた。
それにしても、よく降る雨だ。
船も来なくなるし、出かけることもできない。人々にとっては時にハードルとなりうるこの雨も、植物たちには恵となりうるのだから、面白い。
わたしもゆっくりと深めていこう。
島リズムのゆっくりしたジュエリー作りを、いつもあたたかく見守ってくれて、本当にありがとう。
大好きな植物で繋がる結婚指輪作り。
これから、三本のリングを作り進めていく。
胸が高鳴る時間が、わたしたちを待っている。
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