海が荒れて、島に船が来なくなってから、きっと5日ほどが経っただろうか。
それでも、台風が直撃しなかったのは、本当にありがたい。
迷走を繰り返す台風の進路をいつも気にかけるのは、島で過ごす夏の風物詩のようになっている。
強く吹き付ける雨風の気配に包まれながら、作業机に向かう時間は、案外とても好きだったりもする。
屋久島の植物たちが、これほど生き生きとした躍動感に満ちているのは、その厳しい自然環境によるものである、と聞いたことがあるけど、なるほど。
台風が過ぎ去ると、わたし自身も、いつもフレッシュで真っ白な気持ちになることができる。
ジュエリーに宿る、ふわりとあたたかで、やさしげな美しさもまた、どこまでも深く、研ぎ澄まされた場所から生み出されるのかもしれない。
さて、
今日もひとつひとつ。
プラチナとイエローゴールドでかたどったシダの葉が、くるりとリングになるまでの時間は、とても楽しい。
よく眺めてみると、外側に反りながら、内側に向かってカーブを描いているシダの葉っぱ。
鉄の台に添えて、コンコンと叩きながら、滑らかなカーブをつくり出していく。
硬い金属に、少しずつ柔らかな質感が宿っていく。
繊細なデザインではあるけれど、プラチナとゴールドでできた葉っぱは、硬い。
少しずつ、ぎゅーっと力をかけながら、丸い形に。
ここで、初めてリングらしくなり、あの日、お二人と過ごした時間のひとかけらが、形になったような気がして、なんだかとても嬉しかった。
一日の作業を終え、夕暮れどきの海に。
西に車を走らせると、なんと、予想していなかった青空が広がっていて、
ただ普通の空が、なんとも特別なものに感じられて、眩しい夕日をずっと眺めてしまった。
これでまた一つのサイクルが閉じられたのだと思う。
そしてまた、新しい時間がやってくる。
そう思うと、いつもの夏が、とても新鮮で、刺激的なものに思えてきた。
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