屋久島ノースの山並みが、雲の中に溶け込むように静かに佇んでいる。
雨降る季節の情景である。
薄明るい霧に包まれた景色があまりにも情緒深くて、しばしの間海辺に佇んで、遠くをじっと眺めていた。
この潤いに満ちた空気のせいだろうか、気持ちが柔らかくなってくる。
雨の屋久島。なんとも美しい時間だ。
ツワブキの指輪を作り始めると、気持ちも華やいだ。
お二人との素敵な出会いにありがとう。
イエローゴールドの花が出来上がると、その次はリングの造形作業へと手を進めることにした。
リング部分も花と同じイエローゴールドで、茎をイメージしたそれはとても細い。
その繊細なリングの強度を上げるために、絶妙なバランスを保たなければならなかった。
上から見るとすっきりとした細いシルエット、指の内側に向かうにつれて幅が広くなっていくイメージで。
金槌を使い、コンコンと小さなタッチを重ねていく。
打ち付ける度に、その力に応えるようにイエローゴールドが形を変える。
左右が対称になるように、バランスを整えながら、注意深く叩いていく。
少しずつではあるけれど、指輪が息吹を帯びてゆく。
そのような過程を前にできるのは何よりも楽しい。
1日の終わりに、窓際の光でリングのアウトラインをチェックしてみた。
リング幅のグラデーションは良好だ。
ここからは花とリングを一つにする作業に移ることになるので、慎重に進めていかねばならない。
けれども、今日はここまでにしておこう。
雨はまだ、しとしとと降り続いていた。
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