お二人とイメージしたリングが、手の中で少しずつ形になりつつある。
プラチナにはしっかりとした重みがある。
その確かな手触りを感じながら。
「初めまして」と、彼から最初にメールをいただいたのは、島に春の小花が咲き始める4月初旬のことだった。
それから夏にアトリエでお会いし、今こうして指輪を作っているので、お二人とはもう半年以上のお付き合いになる。
そう考えると、作業机に向かう時間はとても短く感じられる。
ちょうど今、屋久島サウスではコスモスが満開で、リングをお渡しする頃には、山茶花やツワブキの花が咲いているだろう。
これまで、ずっとありがとう。
一度だけの季節を分かち合いましょう!
さて、アトリエです。
お二人とご一緒する日々を大切に思いながら。
じっくりと時間をかけた下準備を終え、くるりとリング状にしたプラチナの両端を繋ぎ合わせる作業に取り掛かった。
酸素トーチの炎に包み、プラチナが真っ赤になるまで温度を上げていく。
繋ぎ目には融点の低いプラチナのかけらを添えておく。
ほんの数十秒の作業ではあるけれど、すべてのタイミングを見極め、慎重に火を扱わなくてはならない。
やがて、リングがある一定の温度に達すると、かけらが溶け出し、つなぎ目の隙間にすっと流れ込んだ。
そして、素早くリングから炎を離す。
先ほどまで真っ赤だったプラチナは、徐々に熱を失い、元の銀白色を取り戻ししていった。
作業がひと段落したところで、ドライブへ。
海沿いに車を停めて眺めたコスモス畑にむっちゃ癒された!
精巧であることが求められるジュエリー作りは、キューっと集中し過ぎてしまうことが多いので、豊かな自然に包まれる島の暮らしはありがたい。周りにはいつも花が咲き、ふわりと心を和らげてくれる。
気がつけば、また新しい気持ちになっている。作りたくなっている。
明日もきっと良くなるだろう。
山から海へと抜けてゆく風にゆらめくコスモスを眺めながら、この半年のことを何気なく思い返していた。
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