ちょうど朝の作業を始めようとしていた時、アトリエの周りをスコールが通り抜けた。
雨雲はブラスバンドのように賑やかな雨を降らせ植物たちに輝きを添えて足早に去っていった。
これは良いタイミングだなと思い作りかけのリングを手にして庭先に出てみる。
朝の光はまだ夏の余韻を残していて力強い。
シャンパンゴールドは島の光と響き合い、まるでその一部分のようにも見えた。
とても綺麗な朝だった。
お二人とお会いした夏の思い出。新しい何かが始まりそうな秋の予感。
屋久島の季節を分かち合いながらお二人の結婚指輪を作っています。
たしかに、どこか有機的な色合いをしたシャンパンゴールドは庭先や自然の中で眺めると気持ちいいかもしれない。
この輝きを手にするだけでなんだか心癒される。それは金属であるはずなのに、まるで樹木のような柔らかさを携えている不思議がある。
それにしても、シャンパンゴールドの印象がとてもよくお似合いのお二人だなと思う。
アトリエでは実際に色々な素材を手に取っていただけたのも良かった。
お二人と素材やデザインの間に何かしらの強い引力のようなものが働く瞬間に立ち会うことができるのは何よりも幸せなことだと思う。
お二人の暮らしに寄り添う素材選びから始まるオーダーメイドはいつも心躍る。
屋久島でご一緒できた喜びは、爽やかな風のように今もなおここに漂って作業に力を与えていてくれている。
さてさて、アトリエです。
いよいよ造形作業の下準備は整った。
作業は登山から下山へとスイッチするように。
ここからはリングを削り落とし洗練を与えていく。
まずは彼のリングからタッチを加えていく。
頭の中にはお二人と作り上げたイメージがはっきりとした印象として浮かび上がっている。
その輪郭を手の中にある金属に落とし込んでいく。
大きなリングのその中には出来上がるべき小さなリングの姿があって、どちらかといえば仏像を彫る作業に近しいのかもしれない。
リングの表面は丸く削り落としてなだらかな曲線を与えた。
そして側面には平面部分をしっかりと持たせるように、何もしない余白をつくる。
まだまだ荒削りではあるけれど、リングはラウンドシェイプの柔らかさとシャープな印象を纏いつつある。
それでも造形作業を始めていない彼女のリングと重ね合わせてみると、随分とたくさんのゴールドを削ぎ落としたように見えた。
夕暮れ時には作業を終えて近所のカフェまで出かけた。
妻と一緒にアイスコーヒーとナッツのタルトを食べて、帰り道にパン屋さんに寄って予約しておいた食パンとベーグルを受け取り、お店を出てふと見上げた山々の情景。
今日も澄み切った1日だった。
ありがとう、屋久島!
みなさま素敵な3連休を。
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