少しずつ、指輪が形になりつつある。
イエローゴールドで作った3つの花とリングを組み合わせ、バランスを整えた後、炎を使い、温度を上げて互いを繋ぎ合わせる工程に入った。
作業はいよいよ佳境に差し掛かっている。
出来上がりと時を同じくして近づいてくる、お二人のご婚約の日を想い、胸を高鳴らせながら。
作業を始めた頃、アトリエの庭に咲き始めた赤と白の花は、今もなお開花の勢いを増し続けている。
朝目を覚まし、花を眺め、いつも勇気づけられて作業机に向かっている。
何気ない日々の暮らしを色鮮やかなものにしてくれる魔法を、花は持っているように思う。
久しぶりの雨が嬉しい。
ゴールドの細い線を細かく切断し、その小さな金属片を朴炭の上にのせ、バーナーで火を当てて小さな粒を作った。
金属には、一定の温度に達すると溶けて球状に変化する性質があるのだけれど、何度やっても楽しくなる作業だ。
ドットの装飾は、雨の多い屋久島ならではのイマジネーションかもしれない。
ゴールドの粒を散りばめた後、じっくりと時間をかけてリング全体を磨き上げると、黄金色の無垢な質感が浮かび上がった。
それぞれのパーツは強く結びつき、一つのリングとして調和の取れたバランスを成している。
3つの花が寄り添い歌っている。粒々の装飾がその周りに散りばめられ、楽しげなリズムを奏でている。
島の暮らしでいつも眺めている花々のように、自然な佇まいを見てとることができた。
冷たい雨上がりに差し込み始めた陽光を受けたリングを眺めていると、
生命の萌芽ようなものが、その中に小さく宿り始めていることを、しっかりと感じることができた。
お二人のエンゲージリングも、今まさに開花の時を迎えようとしているのだ。
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