これは写真を撮影するときの話になるのですが、心情的にとても安定していたり、明るい心持ちの時には、黒を深く、そして力強く描写できるような気がします。
ファインダー越しに、太陽の光が影を力強く際立たせるのを眺めながら、「わたし自身の表現もまた、それと同じようなものなのかもしれない」と妙に納得してしまうのです。
もちろん、気分が少し低めの時もあって、そんな時は自然と、ふわりと明るい絵作りになってしまうのですが。
どちらも、なかなか興味深い相互関係であるなと感じています。
ちなみに、わたしはいつも昼頃になると、「今日の晩御飯は何を作ろうかなあー」と、いそいそと冷蔵庫をチェックし始めるのですが、妻はどちらかというと、「ああ、そんなことも遠い未来の予定にあったかもね」という風に、いつもおおらかに構えていることが多いような気がします。
パートーナーシップもまた、同じなのかもしれませんね。
島に暮らしていると、すぐ近くにある自然の中に、そのような“連鎖”に出会うことが多くあるので、自ずとジュエリー作りにもその感覚が反映されているように思います。
リングの中には明るく世界を照らす光と、どこまでも深くまで潜り込むような影を表現していたい。
あと、結婚指輪の面白いところは、何といっても対になっているところ。(当たり前だけど)
大阪では「ニコイチ」という言葉をよく使うのだけど、結婚指輪もまた、補い合い、二つで一つになるように作ることができれば素敵だな、といつも思うのです。
そして、全然違っていたはずの二人が、いつの間にか似ているように思えてしまうのも、「ニコイチ」の不思議なのであるのだけど。
お二人のリングは、デザインにほんの少しずつ変化を与えながら、それらが繋がり、補い合うように造形を進めています。
同じピンクゴールドという素材だからこそ、細やかな違いや変化がより際立って見えるのかもしれません。
いよいよ造形作業がひと段落し、二本のリングを庭先で眺めていると、なぜだか不意にお二人のことを思い出しました。
考えてみると、それはそうなのかも。
お二人と一緒にデザインをし、ここに生まれるリングは、それぞれの心音だったり、お二人の関係を映し出しているのに違いありません。
12月の陽光が差し込む庭先で、シダの葉は海風にそよぎ、その影が静かに揺らめいている。
ピンクゴールドのリングが、まるでずっと以前からその情景の一部であったように、静かに輝いている。
それを眺めながら、アトリエでお会いした日のことを懐かしく思い出す。
お二人の結婚指輪は、磨き仕上げを施し、いよいよあと少しで完成となるところです。
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