気がつくと8月も終盤に差し掛かっている。
夏休みの終わりが近づいていることを、無意識に考えてしまうのは、この季節独特の情緒のせいなのかもしれない。
作業机に向かい、シャンパンゴールドのリングを手に取りながら、ピークを過ぎた真夏の余韻を愛おしく想っていた。
2024年の夏。一度だけの指輪作り。
お二人の結婚指輪作りの始まりには雨が降ったし、プルメリアも満開だった。
海や川でも遊んだし、夜明けの空には満月を眺めることもできた。
ゆっくりとした昔ながらの手作業ではあるけれど、お二人と季節の移ろいを分かち合いながら、歩むことができるのは、オーダーメイドの素敵なところだと思う。
さて、
今日も島の祝福に包まれながら。
作業を始める前に庭先の植物に癒されておく。
どこにでもあるような、何気ない出来事を分かち合える誰かがいると、日々は喜びに包まれる。
お二人のリングには、屋久島の緑をモチーフがアクセントになるのだけれど、それはもう少し先のお話に。
最初は荒い目の鉄鋼ヤスリを手に取り、思い切り良く削り落としていく。
リングをぐるりと一周、そしてまた一周。角度を変えながら同じタッチを繰り返す。
ざくざく、といった感じで、シャンパンゴールドの手触りが響いてくる。
作業台の上に散らばる金属片が、デスクライトの光を受けてキラキラと輝いている。
まだまだ荒削りではあるけれど、その無垢な表情が、とても心地よく感じられた。
お二人はアウトドアでも多く活動される、ということだったので、リングのアウトラインはシンプルなラウンドシェイプでお作りすることにした。
丸みを帯びた形状のリングは、体の一部のように馴染んでくれる。
表面をプレーンに仕上げておくのは、小さな傷がついてもメンテナンスをしやすいのもある。
時と共にリングは味わい深くなり、いつも新しい表情を見せてくれるのも、好きなところだ。
丁寧に手入れをしながら、永く愛用いただけるように、この段階でしっかりと丈夫に仕上げていかなくてはならない。
おおよそ角が取れたところで、少し目の細かい鉄鋼ヤスリに持ち替え、荒削りな表面を丸く整えていく作業に移ることにした。
こうして少しずつ、一つのジュエリーが形作られていく時間が好きだ。
まるで、お二人と一緒に蒔いた種が発芽を始めたような気がして、嬉しくなる。
そして、やがて迎える開花の時を思い描きながら、ワクワクした気持ちで手を動かし続けていた。
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