雨の日が続いている。
窓の向こうでは山々がマフラーを巻くみたいに白くて分厚い雲を抱いている。
新緑の鮮やかさがむっちゃ力強い。
雨は一日をかけてしとしと長く降り続き、時折ふと気がついたように激しく地面を打ち付ける。
雨音は分厚い膜のようになってアトリエの中にいるわたしはいつも心安らかなになる。
穏やかで、どこかワクワクで、
子供の頃に一人で部屋にこもって工作をしていた気持ちが蘇ってくる。
雨の日のジュエリー作りがとても好きだな、と思う。
お二人の結婚指輪を作り始めたのは、夜のうちから雨が激しく降り始めた日の翌朝のことだった。
ちょうどその前日に彼女にお会いしてサイズをチェックしていたところだったのだけど、
その打ち合わせの印象がまだ鮮明なうちに作業机に向かうことができたと言ったところだ。
島に長く暮らす彼女もまた、きっとこの雨のフィーリングを知っているに違いない。
お二人が選んでくれた素材はプラチナで、まずは酸素トーチの炎でそれらを包み込むところから作業を始めた。
作業温度は約1100度ほど。プラチナを真っ赤になるまで熱すると、その組成がふわりと緩んで作業がやりやすくなる。
この柔らかさと硬さ、そして融点の高さが、何千年もの時を在り続けるプラチナの強さなのだと思う。
プラチナは冷たいはずの金属なのに、ポツリと灯る明かりのような温度を感じられるのも好きだ。
金属たちが生まれた大地の響きみたいなものに包まれると安らかな心地に包まれる。
その守られている感じは私にとっての雨みたいな場所に似ているようにも思う。
別の人にとってはキャンバスの中かもしれないし、あるいは海を漂う船のようなものかもしれない。
出来上がるリングが、それぞれにとってどこか戻る場所のようなものであれば素敵だな、と思う。
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