一日の作業の始まりにk20ゴールドを炎で包んで柔らかくした。
そして両端からくるりと丸くしてゆくと、無限大を表現する∞のような造形に落ち着いた。
純金を多く含むk20ゴールドの鮮やかな色彩はまだ酸化膜の奥に潜んでいる。
一つから二つが生まれるようなイメージの中で。
同じk20ゴールド、同じデザインをサイズ違いでお作りするお二人の結婚指輪である。
k20ゴールドはアトリエでお会いした時にお二人がリクエストしてくれた素材だなのだけれど、その艶やかな金色が趣深い。
ゴールドの含有率も高めなのでk18ゴールドよりも少しだけ重たかったりもする。
指輪作りではそれが完成する最後の最後に本来の色彩や輝きが現れるように工程を進めるのだが、
その工程の所々にk20ゴールドの美しさの可能性のようなものを感じ取ることのできる瞬間がある。
どこかいにしえの雅やかさを感じるその佇まいに、作業机に向かうわたしも夢中になっている。
くるりと巻いたリングの両端にある切断面を整える。
空に眺める星のように小さくて強い輝きを持つ金属片がこぼれ落ちる。
断面からは色濃い金色が現れて、思わずドキリとしてしまった。
そして、両端をぴたりと合わせてその間に融点が少しだけ低い金属を流し込む。
炎の中で行う慎重な作業である。
十分な熱が回りつつ温度が上昇しすぎないポイントを見極めなくてはならない。
作業をひと段落して庭先に出てみると、シロツメクサの一群を発見!
ほんの一週間ほど島を離れていた間にツユクサもいっぱい咲いていた。
島の時間はとてもゆっくりと、そして力強く流れている。
一日少しずつ止まることのない歩みが植物たちにインスパイアされるところだと思う。
一日の作業が終わって、作業台の上に作りかけのリングを眺める時間が好きだ。
k20イエローゴールドは2本のリングになり、表面の酸化膜はすっきりと洗い流されて、力強い色彩を世界に放ち始めている。
作業が終わって窓の向こうを見ると日が暮れようとしていた。
青い時間。沈みゆく太陽のオレンジ色。浮き上がる黒いシルエット。
夜の始まりを迎える屋久島を眺めながら、色っていいなあ、としみじみ思った。
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