いとこのパートナーである彼女に、ルチルクオーツの指輪をお作りするのは、夏の終わり頃からの約束だった。
デザインがすでに形になっていたので、始めようと思えば取り掛かることができたのだが、なんとなく作りそびれてしまっていた。
もっと踏み込んだアプローチができるだろうとか、新しいデザインに仕上げたいとか、表現的挑戦が先に立って、つい手が出にくくなっていたのだ。
わたしは、天然石というものが、もともと大好きである。
水晶とか、蛍石とか、ルビーとか、ダイヤモンドとか。インディアンジュエリーのターコイズとか、石の中にできる紫水晶の結晶とか。
石を眺めたり手に取ったりしているだけで、心が安らぎ、不思議とワクワクするのだ。
石そのものを、石だけで収集するのも好きだったし、それが高じてジュエリー作りを始めるようになったと言っても過言ではない。
そんなわけで、彼女からルチルクオーツのリングをリクエストいただいた時点で、作ってみたいジュエリーのイメージが広がり過ぎてしまって、「ああ、どのスタイルで仕上げていこうか!」と右往左往してしまったのだ。
それから、彼女と話をしていて、思い描くジュエリーの様式が私の好みとかなり近しいものだったのも、この制作を大切に温めておきたい気持ちを強くさせた。
お互いにお気に入りだったのは、インディアンジュエリーのように心に響く力強さがありつつも、上品な技巧を凝らして作られた、洗練されたジュエリーだった。
これはこれで結構凝った趣味だと思っていたけれど、こんなに近しいところに、同じイメージを共有できる人がいるとは思ってもいなかった。
今回のジュエリー作りは、まず、シルバーとゴールドを溶かし、材料となる地金を作るところから始めた。
シトリンを囲むゴールドと、リングとなるシルバーに十分足りる量を用意してから、一気に作り進めていくといった感じだった。
でも、ゴールドでシトリンを包み込む石枠を作っている時点で、もうかなり入り込み過ぎてしまっていて、結局、作業の途中に写真を何枚か撮影しただけで、あとはずっと作業に没頭し、机に向かいっぱなしだった。
シルバーリングの中央に、ゴールドの粒々の装飾をあしらった、クラシックなデザインである。
元来、この粒々はもっと小さくて繊細に表現をするものであるけれど、「もう少しコロリと可愛い感じにならないかな」と、長い間ずっと思っていた。
それが、いとことパートナーの彼女とのジュエリー作りで、初めて形になったわけである。
パッションにしてもインスピレーションにしても、オーダーメイドのジュエリー作りでは、想像を超える何かに出会うことができるという、贈り物のような時間である。
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