木槌、金槌、鉄の芯金と。ジュエリー作りの道具は思いのほかずっと変わっていない。
歴史の中の職人たちもきっと同じリズムを奏でていたのだろう、アトリエの中にコンコンコンと音が響く。
昔ながらの手作業で今日もお二人の結婚指輪を作っている。
始まりはプラチナの細い線から。
イメージを共に抱き、それを形に変えてゆくオーダーメイドの時間はいつも楽しい。
考えてみると、物心がつく頃から手を動かして何かを作っていたように思う。
工作から始まって料理まで、ジュエリーに出会う前からずっと何かに夢中になってきたのは、
作ることにいつも救われていたのかもしれないな、と思う。
わたし自身の中で完結していたはずのその癒しのようなものを、誰かにバトンタッチできるという可能性に気がついたのはジュエリー作りに出会ってからなのかもしれない。
今日も安らかな心地に包まれつつ。
彼のサイズは16.2号で彼女のサイズは9.5号。
ここから出来上がりまでの工程で生まれる拡大を計算して両端をカットする。
糸鋸がプラチナに細い溝を作り、小さなプラチナ片が作業台に散りばめられる。
その金属の輝きに思わずドキリとしてしまう。
プラチナの線はくるりと端正な円を描き、その両端はぴたりと合わさった。
シンプルな作業ではあるけれど、うまくできるととても嬉しい。
昨日よりも良くなるように、最大限に負荷をかけてベストを尽くすことができる場所があると人生は喜びに包まれる。
作業机に向かい小さなリングを手にする小さな世界かもしれない、けれどもここに広がる無限のフィールドを感じることができる。
お二人のために結婚指輪をつくることは、わたし自身にも豊かさと喜びをもたらせてくれているに違いない。
そしてこのフィーリングが目の前にある小さなプラチナリングに反響すると素敵だと思う。
6時を過ぎてもまだ明るいので嬉しい。
夕暮れ時に作業をひと段落して海まで車を走らせている途中に百合に夢中になってしまう。
凪いでいても、波が高くても。
爽やかな一日だった。
今日にありがとう。
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