おかげさまでアトリエのある南部は停電もなく無事に過ごすことができました。
台風は去り、気がつくとお二人の結婚指輪作りは佳境へと時を進めている。
丸く端正な輪郭を得たリングは石膏でできた窯の中に収めて低温で1時間ほど“焼き”を入れて、その組成を硬くさせた。
窓の向こうから聞こえてくる蝉の鳴き声がなんだか少し懐かしく感じられる。
いよいよあと少しだ。
内側にはさらにいくつかのタッチを多く加えておく。
やがてそこに柔らかな光沢とつるりとした質感が現れる。
ここにはお二人の大切な印を刻むことになっているので、できるだけプレーンな状態に仕上げておきたい。絵の具を乗せる前の真っ白なキャンバスのように。
もう何ヶ月前になるだろうか。
指輪作りの始まりに、お二人のお名前とお名前と日付を筆記体で綴ったオリジナルの刻印データを送ってきてくれた。
その刻印の向かい側には島の暮らしで馴染み深いリーフの模様を彫刻することになっている。
とてもシンプルなシルバーリングはあと少しすると世界に一つの結婚指輪になる。
お二人の大切な想い、沖縄での暮らしの中に必要なこと、そして屋久島とわたしと。
今ここにある時間から生まれるデザインがとても興味深い。
ひさしびりに山々を眺めた。
まだ雨は少し降っている。
それにしてもこの島でしか味わうことのできない日々だったな。
指輪作りの時間を少し振り返りながら。
山々を覆う雲の合間を抜けて窓から降り注ぐ光の下でお二人のリングを眺める。
彼の3.0mm幅と彼女の2.3mm幅。
その丸いアウトラインが滑らかすぎて!
お揃いの2本のリングがガラスケースの中でゆらゆらと踊っているようにも見えたワンシーン。
お二人はとてもハードな日々を過ごしたと思うけれど、
偶然にもお互いの島に台風がやってきて、なんだか強い引力のようなものを感じながら作業机に向かう日々でした。
それでもわたしたちを惹きつけてやまない南の島暮らしなのかもしれませんね。
いつもあたたかく見守っていてくれてありがとう!
沖縄と屋久島を紡ぐ指輪作りはまだもう少し続いてゆくのだが。
けれど、これはまだ少し先のお話に。
夏の終わりに完成編を語ることにしよう。
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制作編