しとしと雨降りの日が続いている。
春を思わせる暖かな雨だ。
海の前にあるアトリエでは湿度を帯びた潮風が強く吹き付けていて、窓越しにゴロゴロと波の音が聞こえてきた。
もう少しすればお二人が日本に帰ってきて新しい暮らしを始めることになっている。
春にお届けをできるように結婚指輪を作り進めている。
さて、二月の始まり。
島に暮らしていると、ところどころに季節が移りゆく兆しのようなものに出会えることがある。
アトリエの庭先では百合の株がポコポコと姿を現し始めていてむっちゃ驚いた。
百合の株は腰くらいまで丈を伸ばし、ゴールデンウィークごろには優雅な花を咲かせることになる。
どこかのお城に飾っていそうなくらいに完璧で美しい白百合だ。
少しずつではあるけれど、休むことのなく進み続けている。
そのような植物たちの姿を見るといつも励まされる。
今日も作っていこう、と。
いよいよこれがお二人の結婚指輪作りのラストタッチである、
そう自分に言い聞かせるように作業机に向かった。
表面を丸く削り出したリングには緩やかなカーブを仕上げて仕上げるので、酸素トーチの炎に包んでプラチナを柔らかくしておく。
プラチナの作業温度は高い。リングが真っ赤に熱を帯びる。
同じ金属で同じデザインの指輪なのにこんなにも手触りや扱いが違っているものだなと、いつもながらに面白く思う。
今頃ボストンには雪が積もっているだろうか。
なぜだか不意にお二人のことを思い出した。
リングの造形がひと段落した頃、山のずっと上の方に虹を置いて雨雲は遠ざかっていった。
そのタイミングに庭先で出来上がったシルエットを眺めておく。
柔らかさと。力強い輝きと。
2.0mm幅のラウンドシェイプ、緩やかなカーブを纏ったデザインである。
ぴたりお揃いのデザインで作った彼女のシャンパンゴールドと。
ありがとう!
最後にリングの内側に刻印を施して、お二人のリングは出来上がりとなりますが、
この続きはまた別のお話で。
シンプルで特別で、お二人だけの結婚指輪をご覧いただけると思います。
完成編はもう少し先のお楽しみに!
オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547