夏の百合が満開になっている。
子供の手のひらほどある白い花はゆらゆらと風に揺られ、青空の下でなんとも爽やかである。
「百合の花が今年はすごいですよね!」と近所の方と何気なく話していたのだけど、季節の豊かさを分かち合うことができるのは、島暮らしならではの喜びなのかもしれない。
屋久島の東側に暮らす彼も、きっと同じ夏を眺めているのだろうな、と思いを巡らせながら。
アトリエでは新しい材料を用意して、新しいジュエリー作りを始めていた。
プロポーズの日に向けて彼とデザインをしてきたのは、ピンクゴールドとプラチナで作るお揃いのリングだ。
窓際にあるローラーは、もう20年近く使っている。
ローラーは金属を圧縮する道具で、目標とする数値にダイヤルを合わせ、パスタを伸ばす道具みたいに片側から金属を入れ、くるりとハンドルを回すと逆側からお目当ての寸法になったものが出てくる仕組みになっている。
なんと言っても、テーブルがしなるくらいに、重たい。
プラチナの丸線は直径1.5mmのものと、直径1.0mmを用意した。
あともう一つ、ピンクゴールドも直径1.0mmで揃えた。
1.5mmの丸線をローラーで0.9mmまで圧縮させると、おそらく横幅は1.9mmくらいまで伸びるだろう。
目的地と現在地を確認しながら、少しずつ作業を進めていくのが、旅路みたいで楽しい。
0,1mm単位で雰囲気が大きく変わってしまうほどの繊細なリングなので、慎重にタッチを積み重ねなくてはならなかった。
プラチナ、ピンクゴールド、プラチナ。
お目当ての寸法に3つの素材を整えることができたのは、夕暮れ時に差し掛かる頃で、結局下準備に丸一日をかけたことになるのだけれど、実のところ、この工程が仕上がりの美しさを左右する大切なパートだったりもする。
一年もの間、土の中でゆっくりと命を育んでいる百合のように、とまではいかないかもしれないけれど、
彼とお会いした日から指輪作り始まっていて、
そう考えると、島で暮らす一日一日がとても大切なものに思てきた。
じっくりいきましょう。
素敵な花を咲かせましょう。
指輪もそうだけど、お二人が育む時間もまた、花のように美しく、唯一のものであるように思う。
夕暮れ時になり、涼しくなったところで、やっと外に出ることができることができた。
思い切り深呼吸。
見上げると西陽を浴びた木々が一日の余韻のように、そのシルエットを浮き上がらせていた。
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