雨上がりの朝、小さくて青い花が庭の片隅に佇んでいた。
ツユクサが咲いたのはもしかすると今年最初だったかもしれない。
嬉しくなってしゃがみ込む、夢中になってファインダー覗くのはいつものことである。
小さき世界と徐々に波長が合い始める。
こんなにも小さいのに、ハッとするくらい精巧で、オリジナルな存在感がすごい!
自然を愛するお二人もきっとこの美しさを知っているのだろうな。
不意に海の向こうを想う。
きっと、ここにあるものは生きること、それ自体の美しさであるのかもしれない。
同じような美しさを感じるシーンがいくつかあって、それは一流のアスリートが見せる動きやシルエットだったり、職人の手先や後ろ姿だったりする。
無の境地というのだろうか、演じるのではなくて精一杯やりきっている姿を前にすると、花や海に似たような美しさを覚えずにはいられない。
見上げると太陽の光がハイビスカスの生垣を通り抜けて力強く降り注いでいる。
久しぶりの眩しさに思わず目を細める。
暑い一日になりそうな予感がした。
考えてみると、造形の手本となるものはいつも足元や頭上にたくさん生きているわけであるのだけど w
今日も島にインスパイアされてジュエリーを作っている。
アトリエでは造形がひと段落をした彼のリングに続いて、彼女のリング作りに着手をした。
ぴたりとお揃いのフォルムに仕上がるように、彼のリングを作ったのと同様のタッチを、同様の流れで施していく。
鉄鋼ヤスリで大まかなフォルムを削り出したその後は荒い目のサンドペーパーを使って面と面を繋げるようにざっと磨き上げていく。
そうするうちに不均一な箇所がいくつか出てくるので、そこを鉄鋼ヤスリで整える。
次はもう少しだけ目の細かい紙やすりに変えて全体をやすりがけをする。
同じようなタッチを何度も、数時間ほど繰り返しただろうか。
やがてリングの表面には滞りのないカーブがいくつも集まってつるりとした曲面が生まれた。
2.3mmのリング幅。
表面は大きく伸びやかに、張りのあるカーブを描いている。
側面にはほんの少し平面を残してあって、この部分が適度なボリュームと安定感を、快適な着け心地を約束してくれている。
そしてこれからタッチを施していくリングの内側だ。
指と直に触れることになるリングの内側には極緩いカーブをつけて優しく仕上げたい。
朝の庭先で出会った情景のように、日常を生きる美しさを、このリングにも表現できると嬉しい。
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