プラチナとピンクゴールド。ふたつの素材を用いて、おふたりの結婚指輪を作り進めている。
彼女のピンクゴールドは、細い部分が1.3mm幅と、とても繊細だ。
その華奢なシルエットを、息を潜めるようにして、鉄鋼ヤスリで慎重に削り出していく。
彼のリングとは、素材もフォルムも異なっている。
けれども、その奥底にはふたつを繋ぎ合わせる確かなインスピレーションが流れているように思う。
時間という、同じひとつの流れを宿すように、タッチを重ねていく。
おふたりと一緒に思い描いたイメージが、少しずつ形になっていく時間は、心躍る。
喜び満ちる日々に、ありがとうございます。
台風が去ったあとなのに、なぜか夏が戻ってきたように暑いのはなぜだろう。
庭先ではシロツメクサが背丈を伸ばし、ハイビスカスもまた元気に花を咲かせ始めている。
いつもは作業机に向かい続ける、静かでシックな時間が流れているのだけれど、
庭先で出会うささやかな変化が、とても新鮮な喜びを与えてくれる。
休むことなく、力強く生き続ける植物たちの姿に癒されながら、今日も作業机に向かっている。
さて、指輪作りもいよいよ後半に差し掛かった。
ピンクゴールドのリングをひととおり削り終えたところで、紙やすりでざっと表面を磨き上げ、そのあとにリングを朴炭の上に乗せ、ガスバーナーの炎に包んだ。
いくつかの工程を経て緊張を帯びた金属を、ここで一度、やわらかく解きほぐすためだ。
金属というのは不思議なもので、作業机に向かっていると、ときおりその中に、小さな呼吸のようなものを感じることがある。
その小さなリングに、一つだけの温度を宿すように、これからさらなる造形を重ねていくところだ。
柔らかで、力強い。
植物を手にするときのように、やさしい心地に仕上げることができればいいと思う。
夜になると、窓の向こうには星空が広がった。
雲ひとつなく、澄み渡る山際を眺めるのは、ずいぶんと久しぶりのような気がした。
そういえば、おふたりは屋久島よりもずっと南の島に暮らしていたと言っていたけど、
そこで眺める星空も、きっと見事なものだろうなあ。
明日もまた、暑くなりそうだ。
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