
やわらく冷たい雨が降りはじめたのは、 おふたりが島の役場で婚姻届の手続きを終え、アトリエにたどり着いた頃のことでした。
濃い緑に包まれた、静かな夕暮れ時でした。
一月になったというのに、みんな薄着で過ごせていたのも、南の島ならではの軽やかさなのかもしれません。
庭先では、山茶花とツワブキが色鮮やかな明かりを灯すようにして、ぽこぽこと花を開かせていました。
ほのぼのとした祝福に包まれた、今年最初の結婚指輪の相談会です。
アトリエでは、サンプルリングを囲みながら、素材やデザインのことをご紹介させていただきました。
ゆっくりとした島の時間の中で、おふたりのお住まいやお仕事のこと、そして出会いのことまで、自然と話は広がっていきます。
こうやって何気なく交わした会話が、デザインの大切なエッセンスになったりするように思うのです。
彼女のお好みや、ふと思いついたわたしのアイデアを、丁寧に手帳へ書き留めていく彼の姿が、とても印象的でした。
「わたしたちが出会った屋久島で、結婚指輪をオーダーしたかったのです」
おふたりが微笑みながら話してくれました。
「縄文杉からの帰り道、写真を撮り合ったのがきっかけだったのです。」
巡りゆく時の流れの中で、わたしたちは、信じられないような偶然を重ねるようにして出会います。
大地に雨が降り注ぎ、そこに小さな花が咲くように、
これから生まれる結婚指輪もまた、今という時間の中から生まれてくるもののような気がします。
素敵な出会いを紡いでくれた、屋久島にありがとう。
おふたりが選んでくれたのは、シンプルなラウンドシェイプのデザインです。
お揃いのプラチナでお作りします。
内側には、おふたりが出会った場所である屋久島を、いつでも感じられるように、彫刻模様と天然石の装飾を施す予定なのですが、
それを思い描くだけで、わたし自身も、あたたかな気持ちに包まれています。
指輪が完成する頃には、きっと春の花が咲き、生き生きとした新緑が島を覆い尽くそうとしていることでしょう。
はじまりの時に向けて、わたしたちは最初の一歩を、静かに踏み出したのでした。

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