島にもいよいよ冬がやってきたことだし、庭先に咲くツワブキを眺めながら、お二人の結婚指輪作りを始めることにする。
とても爽やかな心地だ。
キリリと冷たく澄み切った空気に包まれ、身も心も新しくなったような気分である。
12月半ば、快晴の日。
作業机にプラチナを用意して、最初の一歩を踏み出す。
お二人と一緒にデザインしたのは、素材もデザインも、ぴたりとお揃いのリングだ。
サイズとボリュームは、それぞれに合わせて丁寧に作り進めていく。
彼女とは9月にアトリエでお会いしたし、彼は青山での裕子さん個展に来てくれたので、指輪作りのイメージはとてもつかみやすい。
リング幅は2.0mmと2.5mm
くるりと巻いたプラチナの両端を、酸素トーチの炎の中でつなぎ合わせる。
木槌で叩き、鉄鋼ヤスリで削り出していく。
それ以外に、特別な道具や秘技みたいなものは出てこない。
モチーフになっているのは、屋久島の暮らしの中で出会う光やリズム。
形のないものを、曲線として、小さなリングに表現していくのだ。
とてもシンプルな作業である。
どうして周りをシンプルに整えるのかというと、心と手、そして指輪の距離を近くするためなのかもしれない。
「家族が屋久島で仕事をするようになったこともあり、何度か島を訪れています」と彼女は言う。
屋久島がご縁で始まった指輪作りは、まるで奇跡の出会いであるように思ってしまうけれど、そこには確かな繋がりのようなものも感じることができる。
1日の作業を終える頃、屋久島サウスも一段と冷え込んでくる。
分厚いフリースを着込んで、思い切って庭先に出て空を眺めてみる。
どうやら満月が近いらしく、月明かりが雲を強く照らしている。
明るい夜だ。
山々の稜線にかかる雲の切れ目からは、チラチラと小さな星たちが輝いて見える。
山茶花も日に日に美しくなるし、天気雨が降って虹も出そうだし。なんだかまた忙しくなりそうだ。
島の冬と共に歩む、明日の指輪作りを思い浮かべる。
そして、嬉しくなる。
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