
山際に、一日ずっと虹がかかっていた。
12月中旬を過ぎた屋久島サウスは、暖かな光に溢れている。
この場所に虹が出るようになると、クリスマスが近づいている合図だ。
島のリズムに波長を合わせるようにして、お二人の結婚指輪作りも、いよいよ後半に差し掛かっている。
窓から差し込む光が心地よく、ブラインドをすべて上げて、陽光に包まれながら、コツコツと手を進めていた。

削り出しの作業をひと段落した彼女のリングを、再び炎で焼きなまし、そして木槌で打ちつけながら、柔らかなカーブを与えていく。コンコン。
小さなリングの中には、幾重にも重なる、柔らかなカーブが生まれてくる。
そのフォルムを眺めながら、島の暮らしの中で感じる時間そのものだな、と思う。

ジュエリーのスタイルには、スタンダードで普遍的なものがたくさんあって、それはとても好きなのだけど、屋久島に暮らすようになってからは、もっぱら自然に影響を受けてきたように思う。
それは季節の巡りだったり、波のリズムや、月の満ち欠けだったり。
一日が始まり、そして終わってゆく、その重なりが織り成す色彩だったりする。
おふたりのリングにも、もちろん、そのエッセンスが大きく含まれているように思う。
今までずっと、ジュエリーを見てくれて本当にありがとう。
作業のあいだ、まるでチアリーディングがカラフルなポンポンをふるように、ずっと励ましてくれていた庭先の山茶花にも、ありがとう。

二本のリングの表面を、紙やすりでざっと磨き上げた。
そのフォルムを、昼間の太陽の下で眺める。
ピンクゴールドは、花のように艶やかで眩い光でもあり、同時に、緑の中に溶け込む深い影でもあった。
これから更なるタッチを加えていくのだけれど、
完成のイメージはより鮮明になり、その印象が手に届くような気がして、穏やかな希望に包まれた。
あと少し。
年を越える制作になりそうだけど、それもなかなか楽しい。
森の音や香りを感じながら登山道をハイキングするみたいに、残りの工程もじっくりと進めていこう。

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