作業の合間にいつものビーチまで出かけ、少しだけ浜辺を歩いて、帰り道に郵便局に寄り、年末の諸々の手続きを終えた。
「さあ、アトリエに帰ろう」というところで、車窓から海のキラキラに目をとめて、見晴らしの良い場所で車を止めた。
冬の光を眺めるのが大好きだ。
朝の木漏れ日のような、水面の煌めきのような。
プラチナの輝きに魅せられながら。
タッチを重ねるたび、プラチナリングに小さな息吹のようなものが宿ってゆく。
その時間に対峙することができるのは、作り手ならではの喜びであるように思う。
彼女のリングとリズムを合わせるようにして、彼のリングを同じフォルムで仕上げていく。
リング幅と厚みは、彼のサイズに合わせて大きく作ることにした。
つけた時のフィーリングだったり、お二人が並んだ時の雰囲気を、より親密なものに仕上げたかったからだ。
造形がひと段落した二本のリングを作業台に並べ、次の工程に移ることにする。
リングの表面には2箇所に三日月型の切り込み模様が入っていて、それらが生み出すラインがリングを一周、なめらかな波のように巡っている。
リング全体は光沢仕上げに、三日月の切り込み模様部分はマットに仕上げる予定である。
どちらも異なる表情だけど、どちらも同じ場所にある。
「じゃあ、その光と影のような印象に、時間を感じられる“動き”を与えるにはどうしようか」
そう考え、リング全体に大きな揺らぎを与えることを思いついた。
プラチナリングを鉄の台に置いて、コンコンと叩いて曲げてゆく。
大きなカーブから始め、小さなカーブへと、少しずつ段階を追いながら、同じタッチを繰り返す。
思いの外、シンプルな作業なのである。
アトリエに広がる空気はひんやりとして心地よい。
窓の向こうには大きな虹がかかっている。
生垣の山茶花にメジロたちが集まり、チィチィチィと楽しげに囀っている。
わたしは、プラチナリングのサイズを測り、円形を整え、また少し叩いてカーブを与える。
屋久島サウスの12月は、このようにのんびりと過ぎてゆくのであった。
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