作業机に向かい、まず最初に取り掛かったのは、プラチナとk18イエローゴールドを丸くリング状に形成する作業だった。
お二人の結婚指輪作りのために配合をした素材は、これから幾つもの工程を経て、約1ヶ月ほど先には世界に一つだけのリングとなる。
プラチナはその特性に合わせた高温域で作業を行い、イエローゴールドはそれよりも少し低い温度で作業を進めていく。
火をかけて金属を柔らかくし、木槌でコンコンと叩きながら形を整える。そして炎の中でリングが真っ赤になるまで温度を上げ、その両端を慎重につなぎ合わせていく。
昔ながらのリズムで進められるジュエリー作りが、やっぱり好きだなと思う。
島に一部被害をもたらした台風は、秋の雲を残して過ぎ去っていった。
空は澄み渡り、大掃除をした後のように、どこか清々しい気配がアトリエの周りを覆っている。
あるいは、わたしたちもこのようにして、始まりを繰り返し続けていく存在なのかもしれない。
島に暮らすようになってから、そのような考えがよりリアルな体験として感じられるようになった気がする。
くるりと丸くなったプラチナとイエローゴールドを、夕暮れ時の柔らかな光の中で眺めた。
モンステラの生き生きとした緑に、安らぎを感じられる。
そこには、ささやかではあるけれど、確かに再生の兆しのようなものを感じることができた。
金属の時間は植物のそれよりもずっと長いものであるけれど、同じように変化と再生を繰り返していく存在なのかもしれない。
お二人の暮らしに寄り添いながら、時には小さな傷がついたりもするだろうけれど、それもまた新たな装飾となり、常に始まりを繰り返していくような結婚指輪になれば素敵だと思う。
こうして、静岡に暮らすお二人にお届けする結婚指輪作りが始まった。
今日から新しい1ヶ月が始まるのも、素敵なタイミングのように思う。
まるで長い眠りから覚めた時のような、フレッシュで軽やかな気持ちに包まれている。
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