激しい雨の降る日が続いている。この季節は、数時間ごとに晴れと雨とが交互に訪れる。
アトリエの窓の向こうには、山際の低い位置に架かる虹を見ることもできた。
この場所に虹が架かるようになると、少しずつ冬の訪れが近づいてきている合図でもある。
「今年もあと2ヶ月と少しなのか!」と、時の儚さに驚きつつも、とても濃密だった2024年の出来事を思い返していた。
お二人がアトリエを訪ねてくれたのは、蝉の鳴き声が響く夏の始まりの頃だった。
同じ九州から、ゆっくりと旅をしながら、ここ屋久島までやってきた。
道中にメッセージをやりとりしていたのだけど、その旅の貴重さがダイレクトに伝わってきて、スマホを眺めながら幸せな気持ちに包まれていたのを、今でもよく覚えている。
なんだか、ずいぶん昔に自分自身が持っていた時間の流れが、そこにあるような気がして、とても懐かしかった。
あの日から、ハイビスカスいっぱいの夏を越え、サキシマフヨウが咲き、最近ではコスモスも見かけるようになってきた。
そしていよいよ、お二人の結婚指輪を作り始める日がやってきたのだ。
お二人のために配合したプラチナを使い、シンプルなラウンドシェイプのリングを作っていく。
長い人生に寄り添う結婚指輪を作ること。それは、お二人のこれまでと、これからを紡ぐような、時間に関わる作業であるのかもしれない。
お二人はこれから、どんな未来を歩んでゆくのだろう。
大切な想いを形にするように、温度感のある、洗練されたフォルムを作り上げたい。
プラチナをコンコンと木槌で叩き、丸くつなぎ合わせる
酸素トーチの炎に包み、その両端をしっかりとつなぎ合わせていく。
アトリエには手作業の心地よい音が響いていた。