雨の日が続いている。
秋の終わりから真冬にかけては案外青空の広がる乾いた日が多いので、この湿度を体感すると「ああ、ここはやっぱり屋久島なのだなあ」と認識を見直すことになる。
庭先では小さくて白い花がぽつりぽつりと咲き始めた。
木々には黄緑色をした若葉を見ることができる。
島はこれから長くて深い雨の季節を迎えることになる。
島に暮らすようになって、季節が近い、というよりかは自分自身もその一部分であるように感じるようになった気がする。
2月になれば2月の花が咲いてその花をかたどってジュエリーを作ることは、あるいはとても当たり前のことなのかもしれないな、とも思う。
旬を扱うのは料理もそうだけれど、魚もまた季節を伝えてくれるのだろうなあ、と隣の島でのお二人の暮らしを想う。
屋久島と口永良部島をつなぐ結婚指輪作り。
本当に不思議な巡り合いだと思う。
けれどもそこに何か強い結びつきのようなものを感じながら。
さて、今日も作っていこう。
12月のアトリエでお会いして一緒にイメージしたお二人の結婚指輪だったけれど、
実際にプラチナリングという質量を持って、叩き模様を施してデザインされ、いよいよ形になる時がやってきた。
これから毎日手にしていただく指輪だ。エッジを効かせたスクエアシェイプのデザインではあるが、ここは手触りを一番大切にしていきたい。
リングの内側はつるりと丸くしておく。
最初は鉄鋼ヤスリで大きく削り落とし、サンドペーパーを徐々に細やかにしながらスムーズな曲面を作っていく。
作り手にとっては出来上がりではあるけれど、お二人にとっては始まりになるのだから、
日々が快適になるようにフレンドリーなつけ心地をここにしっかりと残しておきたい。
きっとこの先何十年もお使いいただくことになるだろう。
いつもよりも長い時間を感じながら作業のタッチを進めていく。
作業台の上に散りばめれられたプラチナの小さなかけらがキラキラと輝いて綺麗だった。
内側の後に側面を紙やすりで磨き上げていくと、端正なフォルムが手の中に現れた。
生まれたての小さなプラチナリングである。
日々の中でお使いいただく指輪は使ううちにどうしても小さな傷がついてしまったりするけれど、
このようにして磨き上げると同じ質感や輝きを取り戻すことができるので、記念日や何かのタイミングで時々メンテナンスをするとリフレッシュできるだろう。
ジュエリーが出来上がってこの先もずっと長いお付き合いができるのもオーダーメイドの素敵なところだと思う。
指輪の造形作業は無事に終えることができた。美しく着地できたように思う。
これからリングの内側に刻印を施してお二人が島に来るタイミングに合わせてお渡しすることになるだろう。
お二人から届いたメールに夏に新しい家族が増えると書いてあった。
何よりも嬉しいメッセージだ。
ご家族との幸せな繋がりは実は今始まったばかりなのだ。
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