今日もまた明るい雨が降っている。
しとしと雨音に包まれるのが心地よくて、アトリエにこもって作業を続けていた。
島の暮らしで素敵なシーンはたくさんあるけれど、
雨とジュエリーと
この時間が一番好きかもしれない。
炎で包んで焼きなましたシャンパンゴールドを打ち付ける金槌の音が、
コンコン、コンと部屋の中に鳴り響く。
さっき作ったコーヒーはまだ熱い。
なかなか悪くない1日の始まりだった。
彼女とは実は、島に暮らし始めてすぐにお会いしていたりした。
屋久島で繋がる結婚指輪作り。
大好きなシャンパンゴールドに癒されながら。
森や海が好きで、雨も好き。
指輪作りは、あるいは数ヶ月の短い期間かもしれないけれど、
屋久島での出会いはいつも強い結びつきのようなものを感じさせてくれる。
偶然のような必然、とでも言うのだろうか、
そのような中で生まれるデザインは不思議なもので、
これで間違いないのだ、と強く信じることができるような気がする。
宮崎に暮らすお二人と一緒に思い描いたのは、大好きな海のイメージだ。
大きなうねり、小さなうねり。水平線に広がる色彩のグラデーション。浜辺に打ち寄せ、砕ける波の音。
いつも体全体で感じている情景を、シャンパンゴールドで紡いでいく。
くるりとするその前に、彼女のリングに太い部分と細い部分をあらかじめ作っておいた。
こうしておくと、リングにより繊細な表情を与えることができる。
お二人とも細身のスタイルではあるけれど、
彼のリングは均一幅のまま、しっかりと丈夫に形作っていく。
少しずつお互いに変化を持たせながらも、そこに確かな繋がりを生み出していく作業は、
オーダーメイドならではの喜びなのかもしれない。
雨脚が弱くなったところで、庭に出て緑を眺めておく。
今日も屋久島にありがとう。
2本のリングは鉄の芯金に当てながら、完璧な円となるまで木槌で叩いた。
出来上がりの際に、目的のサイズにぴたりと着地できるよう、今の段階から狙いを付けておかなければならない。
そして、1日の終わりには、大まかではあるけれど、その造形を端正に整えることができた。
酸化膜で黒く覆われていた表面は綺麗に磨き落とされ、シャンパンゴールドの色彩が表れている。
「なんとも趣深い黄金色であるな」と、いつもながら自然の作り出す奇跡に感嘆を漏らしてしまう。
窓の向こうを眺めると、いつもの屋久島の情景があった。
このシャンパンゴールドも、元々は山々や雨と同じところに生まれたものなのだ、ということが腑に落ちてきた。
それは、とてもスムーズで自然な感覚だったように思う。
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