屋久島サウスの山々に、数年ぶりの雪が積もった。
朝、目を覚まし、何かの気配を感じて窓の向こうを眺めると、南国では見慣れない、白い情景が広がっている。
信じられないほど寒い。けれど、ワクワクする。
なんだか昔話のワンシーンみたいに、幻想的な1日の始まりだった。
南国の暮らしでは、短い冬はとても貴重なものなのかもしれない。
島の北部に暮らすお二人とは、同じ季節を分かち合いながら。
「クラシカルなデザインのシンプルな指輪、のようなものを想像しています。」
彼から指輪作りのご相談をいただいたのは、島にまだ夏の強い日差しの余韻が残る、11月の終わりのことだった。
理想のスタイルだったり、暮らしの好みが近しい方との出会いは、まるで仲間ができたようで、心が躍る。
「縁あって出会った人と、これからの人生を一緒に歩いていく事になりました。」
彼が大切な想いを伝えてくれた。
この小さな島で生まれた繋がりを、とても愛おしく感じながら。
さて、アトリエです。
寒さに包まれていると、研ぎ澄まされる。
くるりとリング状に形成したプラチナに、酸素トーチの炎を当て、その両端をつなぎ合わせていく。
その温度は1000度以上まで上昇し、リングはオレンジ色の閃光を放つ。
強い眩しさから目を守るため、作業中はサングラスをかけなくてはならない。
この極限の温度から生まれる強度も、プラチナの魅力の一つであるように思う。
朝一番で訪れた温泉の近くでは、満開のヒカンザクラを眺めた。
ジュエリー作りの憧れは、儚さと、そのずっと奥の方に感じる生命の力強さのようなものにある。
今日も屋久島にありがとう。
1日の終わりには2本のリングを形成し、
これから始まる本格的な造形作業の下準備を無事に終えた。
目立たないけれど、仕上がりの美しさに関わる大切な工程だった。
その一つ一つを丁寧に作ることができたように思う。
シンプルを、印象的に
強さと、儚さと
島で暮らすようになり、相反するように思えるものが、自然の中で響き合い、一つの時間を作り出していることに気がついた。
その感動を、この小さなリングに表現できるとうれしい。
あるいは、それこそが、島に暮らすお二人と分かち合う想いなのかもしれない。
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