12月になると、景色のトーンが、いくぶん穏やかになった。
島に暮らすようになってからは、海面に伸びるひかりの道を眺めるのが、とても好きになった。
眩しいほどの輝きと、冷たい冬の影が生み出すコントラストが、気持ち良い。
小さなリングの中にも、いくつもの表情が同時に存在すれば素敵だろうな、と思うようになったのは、とても自然なことだったように思う。
それは、永遠に紡がれゆくリズムであり、儚い夢のような時間なのかもしれない。
屋久島サウスでは、年末とは思えないほどに、あたたかな日が続いている。
海は煌めき、大好きなツワブキの花も、あちらこちらで咲き始めている。
おふたりの結婚指輪を作り始めるのに、これ以上ないタイミングだったように思う。

おふたりが結婚指輪の素材に選んでくれたのは、プラチナだった。
プラチナの作業温度は、とても高い。
酸素トーチの炎に包み、1000度以上まで上昇させながら、溶接作業を進めていく。
部屋を暗くし、真っ赤になるまで温度を上げたリングが放つ強い光を、直接目にしないように、濃いサングラスをかけておく。
サイズと幅の異なる2本のプラチナリングを手の中にすると、
これまで長く、おふたりとデザイン作りをご一緒してきた日々のことが思い出され、胸が高鳴った。
いよいよ、始まったのだな、と。

そしてここは、表には見えなくなるけれど、
無事に溶接作業を終えたのち、リングの表面と側面を金槌で、均一に打ち付けておいた。
凸凹模様がつくまで、何度も強く叩き、プラチナに安定した強度を持たせておく。
これから長くお使いいただく結婚指輪だ。
体に響く部分を、しっかりと支えておきたい。
夕暮れ時の光の中で眺めたプラチナリングは、みずみずしくて、綺麗だった。
足元には、ツワブキの花が、まるで黄色い光のドットを集めたように、可愛く咲いている。
そのまっすぐな佇まいを眺めているだけで、なんだか、とても元気になった。
今年は、なかなか良い場所に咲いてくれたなあ、なんて思っていると、
今この瞬間が、いっそう大切なものに感じられてきた。

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