
巡りゆく季節。波のリズム。刹那と永遠と。
彼女のお名前の響きに重ねるように、菜の花をモチーフに婚約指輪をお作りしました。
思えば、菜の花が咲く季節から始まったオーダーメイドでしたが、
島ではコスモスが咲き始め、豊かな時の移ろいを感じています。
婚約指輪作りから、結婚指輪が出来上がるまで、
本当にありがとうございました。
三人で手を繋いでいるような安心感が、作業の日々をあたたかく包み込んでくれました。
気がつけば、夏はどこかへと遠ざかり、
朝夕は涼やかな風が通り抜けるようになりました。
ところどころに秋の色彩が散りばめられています。
アトリエには金木犀の香りが漂い、空に浮かぶうろこ雲を眺めては、心躍らせています。
これまでご一緒したかけがえない日々を、
もう懐かしく思い出しながら。
海の向こうにお届けする指輪を、静かに眺めていました。

コスモスの花びらの上に、そっとリングをのせてみる。
指先には、確かなプラチナの重さが伝わるのに、
手触りはどこまでも優しい。
全体にゆるやかなカーブを帯びた、
波のような輪郭の中に、
リズムの異なるもうひとつの曲線が巡っています。
そのラインを境に、光沢仕上げの部分が鏡のように世界を写し出す。
ちょうど半分がマット仕上げで、
その柔らかな質感が、島の時間に響き合い、
溶けていきそうに感じられました。

彼女の2.0mm幅と彼の2.6mm幅
内側には、おふたりの大切な言葉を、日付とともに刻みました。
刻印の文字は、外側からは見えないけれど、
おふたりの心の中に、ずっとある。
どんな時も、スタート地点を指し示してくれる針のように、
これからの長い時間を寄り添っていく。

激しく降り注いだ雨が上がり、
秋の爽やかな晴れ間が広がりました。
アトリエの窓の向こう、山際の低いところに虹が掛かると、
それは、冬の訪れが近いことを知らせる合図でもあります。
おふたりの暮らす長野では、
そろそろ、山々に雪が積もるころでしょうか。
そして、もうしばらくすると、
島ではツワブキの花や山茶花、そして菜の花が咲き始め、
寒い季節にやさしい彩りと小さな励ましを与えてくれます。
そのようにしてわたしたちは、
少しずつ季節と足並みをそろえるようにして、
月日を巡りゆくのですね。
これから何度、同じ花を一緒に見ることができるのだろう。
そう考えると、今という時間が、とても貴重なものに感じられます。
ご結婚おめでとうございます。
このリングがおふたりの暮らしに、永く寄り添ってくれますように。
楽しい指輪作りを、ありがとうございました。

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