
K18イエローゴールドでかたどった、小さな花。
サイズは5mmほどだろうか。ピンセットの先端に収まるほどの花を3つ作った。
これからいくつものタッチを重ねながら、ひとつのリングへと形づくっていくのだけれど、
それはどこか、本当に植物が育っていく時間に似ているような気もする。
今日も一つずつ。ゆっくりと。
おふたりにとって、大切な始まりの日に向けて、エンゲージリングをつくっている。
ゴールドとダイヤモンドで紡ぐ菜の花と、
プラチナとピンクサファイアが寄り添う、桜の印象。
この夏を越えて、秋が訪れ、やがて冬の深まりが和らぐころ。
少し先の未来を思うと、わたし自身も希望の中を歩んでいるような、どこか特別な気持ちに包まれる。
デザイン作りでは、メールを通じて、彼と幾度も言葉やスケッチを送り合ってきた。
これまでともに育んできたイメージが、今、手の中で少しずつ形になりつつある。
そのような時間を分かち合えることが、何よりも嬉しい。
イエローゴールドの小さな花は、粗さの異なるいくつかの紙やすりを使い、表面を丁寧に磨き上げておいた。
3つの花を組み合わせ、バランスが心地よく整うまで、角度を何度も調整した。
いよいよこれから、本格的な造形作業が始まる。

指のかたちに花がやさしく沿うように、それぞれの花に角度をつけ、つなぎ合わせていかなくてはならない。
小さな朴炭のかけらを丸く削り、それをロウ付け作業の土台にした。
花びらの端と端を接しておき、ガスバーナーの炎に包み、その一点に融点の低いゴールドを流し込んでいく。
ゴールドが溶けてしまわないように、朴炭に炎を当てながら、全体の温度を徐々に上げていった。
バーナーのシューという音が、アトリエに響く。
そして、イエローゴールドの花がオレンジ色に染まり、それを合図にするように、3つの花がひとつにつながった。

序盤の要となる工程だったが、うまくできたように思う。
ここで一旦、ルーペとピンセットを置き、近くの海が見える丘まで車を走らせた。
深く集中しすぎたこともあり、少し緊張を和らげたかった。
夕暮れ時の海は、空との境界がわからないくらい、霞がかったブルーに包まれていた。

背後の山々もまた、淡いブルーの霞に包まれている。
静かに遠くを眺めていると、細かい作業で疲れていた目が、少しずつ癒されていくのがわかる。
それにしても暑い。もう6時近いというのに。
けれども、まだまだこの夏が続いてほしいような、
早くも名残惜しい気持ちで、
青く染まる山々を見上げながら、
この先の作業工程について、イメージを描いていた。
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