お二人の結婚指輪は、シンプルなラウンドシェイプのフォルムで作り進めている。
丸みのある、やわらかなつけ心地のデザインだ。
時を重ねるごとに、まるで体の一部のように、自然と馴染んでくる。
その普遍的なリングに、特別なエッセンスを与えるのは、おふたりの大切な想いなのかもしれない。
リングの表面には、これまで育んできた時間をとどめるように、記号のような装飾を施すことになっている。
どんな出会いだったのだろう。
いつかお会いした日に、聞いてみたい。
作業机に向かいながら、ふとそんなことを思う。
彼のプラチナリングの表面を削り終えると、そのリングをそばに置いて、彼女のリングを削り始める。
サイズの違いに合わせて、幅や厚みをほんの少しボリュームダウンさせながら、バランスをとって、おそろいのラウンドシェイプに仕立てていく。
表面をなめらかに整えたあと、内側にも鉄鋼ヤスリを入れて、柔らかなカーブを施していく。
後戻りのできない一度だけの作業ではあるけれど、伸びやかなラインを描き出すために、思い切りの良いタッチを重ねていかなくてはならない。
削り出しの作業がひと段落したところで、リングを持って、近所を散歩することにした。
太陽の光の中で、リングのフォルムを確かめたかったのと、
あと、緑を眺めて目を休めたかったのもある。
木々を見上げると、夏の木漏れ日がまぶしくて、ふわりと心が解けていった。
爽やかな緑に囲まれた、島の夏がとても好きだな、と思う。
ふと、雨の気配を感じて、急いでアトリエに戻る。
これからいっとき、激しく降り続くのだろう。
なんだかワクワクする、と言ったら、きっと不思議に思われてしまうかもしれない。
雨音に耳を傾けながら、静かに指輪作りを進められることが、ただ嬉しかったのだ。
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制作編