
冬がいっそう深まりゆくころ、島にヒカンザクラが咲き始めた。
北風が強く吹き付けるこの季節は、南の島といえど、思いのほか寒い。
うっすらと雪化粧をした山々を眺めながら車を走らせていると、ときどき濃い紅色が視界に入り込んでくる。
その艶やかな色彩に触れるたび、まるで初めて冬の島を訪れたみたいに、心が躍ってしまう。
もう少しだけ、この夢のような冬が続いてほしい。
けれど、咲き始めた菜の花の気配も気になってしまう。
花々が奏でる季節のリズムに癒されながら、作業机に向かっている。
冬の息遣いが満ちるこの頃に、花をモチーフにしたリングをつくることができたのは、とても素敵なタイミングだったように思う。

イエローゴールドでかたどる、ひらく花。
指先に収まるほどの小さなかたちを、糸鋸で削り出し、それを丁寧にヤスリで整えた。
それらを互いに合わせ、花びらの重なりを表現していく。
ひとつひとつのタッチが、今という瞬間の痕跡を残すようにして、小さな息吹を生み出していく。
季節の巡りの中で一輪の花が咲くのを見つめているような、奇跡のような時間だ。

小さなゴールドのリングではあるが、花の形が手の中で少しずつ育まれていくのを前にすると、不思議と心がやわらいでいくのがわかる。
作業机に向かっているわたし自身も、その愛しげな佇まいに励まされているように思う。
島で出会う、やわらかな癒しのようなものを、誰かと分かち合えることが、本当に嬉しい。
花のジュエリーを作ることもそうだし、花のある暮らしを愛するひとたちと、同じような気持ちを抱いているのかもしれない。
そう思うと、大切な仲間ができたような気がして、心強くなる。
とてもささやかな広がりかもしれないけれど、たしかな手触りのある絆のようなもので、わたしたちはつながっている。
ともに抱くこの喜びを、ジュエリーに変えることができればいいと思う。

夕暮れが訪れるころ、作業をひと段落させて、庭先で一休みをする。
空には、薄く欠けた月が浮かんでいた。
遠くからは、波音が冷たい風に乗って運ばれてくる。
なんとなく遠くを眺めながら、わたしは次の工程の段取りをイメージしている。
寒くなってきたので、キッチンに戻り、熱いコーヒーをいれて、また作業の続きを始める。
こうして、一月のある一日が、何気なく過ぎていくのであった。
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