
春めいた雨が降るようになってきた。
緑を薄いベールでそっと覆うような、やわらかな雨だ。
朝靄のフィルターを通り抜けて届く光が、眩しい。
フリースベストを羽織り、まだわずかに冷たさの残る庭先に出て、
雫の装飾を纏った一年ぶりの景色を、久しぶりの友人に再会したみたいに、親しみを込めて眺めていた。
同じ島に暮らす、お二人の大切な日に向けて、ナノハナの指輪を作っています。
あたりまえのことかもしれないけれど、南の島に訪れる春は、とても早い。
冬のあいだ、静かに息を潜めていたのも束の間、山々の雪解けを合図に、島はいきいきとした躍動の日々を迎えることになる。
新緑の季節が到来し、草花は歌うように命をひらく。
その響きに励まされ、わたしたちは日々の暮らしを営んでいく。
ときには、勢い余る草から暮らしの場所を守る、小さな戦いであったりもするのだけれど。笑
たくさん体を動かし、その日々の中に、いくつものあたらしい発見や感動に出会うことになる。
春の訪れを約束する菜の花をモチーフにした指輪は、まさにそのような暮らしの中に生まれたジュエリーだと思う。
さて、今日のアトリエです。
ピンセットとルーペを使う細やかな工程が続くので、心を静かに整えながら進めていきたい。

花と花、そしてリングとを接続するとき、バーナーの炎に包みながら、その隙間に融点の低いゴールドを流し込むのだけど、
本体が溶けてしまわぬよう、温度の調整には最大限の神経を注がなくてはならない。
バランスと角度を確かめ、慎重に調整しながら、1箇所ずつ接続作業を行っていく。
数えてみると、造形作業が終わるまでに溶接を施すところは、およそ30箇所だった。
1000度近くで溶け、常温まで戻ると強固なゴールドとなる。
丁寧な手作業により仕立てられたジュエリーは、このあと想像以上に長い時を存在していく。
そう考えると、ひとつひとつのタッチが、とても大切なものに思えてくる。
そこに流れているのは、金属が携える、永遠に近い時間なのかもしれない。

3つの花を、リズムよく並べることができた。
リングは、細いゴールドの線を2本重ね、連ねた花をしっかりと支えるように整えた。
どこまでも繊細でありながら、風雨にも耐えるしなやかさを宿している。
島の花々に近づくことができるよう、
残りのタッチを、丁寧に重ねていきたいと思う。

オーダーメイドのお問い合わせはこちらまで
hp@kei-jewellery.com
tel: 0997-47-3547
