青山から島に戻り、アトリエまで帰る道中で車を停めて海を眺めると、そこには少し前までとは違う、新しい景色が広がっていた。
厚い雲を通り抜けた太陽の光が、海面に届き、何本もの柱のようなラインを描いている。
眩しい光と、冷たさを感じる影とのコントラストが力強く響く。
まるでギリシャ神話に出てきそうなシーンだなと、壮大な光景に圧倒されるのも、一年ぶりの感覚であるように思う。
いよいよ島にも冬がやってきたのだ。
島の冬は鮮やかな色彩に満ちている。山茶花やツワブキが咲き、ポンカンやタンカンの収穫時期を迎える。
特にアトリエのある南部は強い日差しに恵まれ、南国の陽気に包まれる。空も澄み渡る、大好きな季節である。
観光のシーズンを終えた島はとても静かで、制作に深く入り込むには理想的な環境なのかもしれない。
この冬も意欲的にジュエリーを作るぞ!とワクワクした気持ちを抱いている。
庭先に咲き始めた山茶花とシャンパンゴールドのリング。
2本のリングは途中まで造形作業を進めているもので、島に暮らすお二人の結婚指輪となるものだ。
「お二人が暮らしている北部は、もうずいぶん寒くなっているだろうなあ。山茶花もきっとたくさん咲いているに違いない。」と、同じ季節を分かち合いながら進めるジュエリー作りはとても楽しい。冷たい冬も、なんだかとても暖かく感じられる。
シャンパンゴールドは、できるだけ細くシェイプしてリングにした。
サイズ違いではあるけれど、2本ともぴたりと同じシルエットだ。
今はまだ荒削りなフォルムの向こう側には、柔らかなラインをイメージすることができる。
お二人とアトリエで一緒にデザインしたリングが、少しずつ形になっていく。
それはまるで、小さな幸せを手の中で育んでいるような感覚かもしれない。
表現したいのは、このあたたかなフィーリングなのだろう。
作業机に向かい、手を動かしていると、数日ぶりに安らかな心地に包まれている自分がいることに気がついた。
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