リングの輪郭が、少しずつ明瞭に浮き上がってきた。
シャンパンゴールド、2.5mm幅。
お揃いのスタイルではあるけれど、それぞれのリングに、細やかな個性を宿らせるように作り進めている。
シャンパンゴールドに刻む、海のリズム。
お二人とは、春のアトリエでお会いすることができました。
雨のち晴れ、ハイビスカスと新しい緑と。
オーダーメイドでジュエリーをお届けしていると、そのデザインはまるで小さな分身のように、それぞれの人たちに、どこかとても親しい空気を纏って生まれてくるように思う。
とくに結婚指輪作りの場合はそうかもしれない。
日々の暮らしに寄り添い、お二人の大切な想いを伺いながらデザインを形にしていくと、ひとつひとつに繊細な個性が宿る。
けれどもそこに、確かなつながりが芽生えてくるのがとても興味深い。
その瞬間を間近で見守っていると、とても幸せな気持ちに包まれる。
偶然のようでいて必然を思わせる出来事に触れ、お二人が出会いこれまで育んできた時間を、想わずにはいられない。
これからタッチを重ねるごとに、少しずつ、それぞれの個性が生まれてくる。
そして、ふたつのリングは、やがてひとつになる。
リング表面の削り出し作業がひと段落をし、次は内側の造形に取り掛かることにした。
ヤスリを当て、内側を丸く、なだらかなカーブに整えていく。
左側のエッジを一周削り、同じ強さで右側も削る。
僅かに角度を変化させつつ、もう一度左をなぞりながら一周。
浜辺に打ち寄せる波のように、均一なリズムでタッチを繰り返していった。
こうした単調な反復作業が、案外と好きだ。
金属を削る小さな音が響くアトリエの中で、心がすっと平になっていくのがわかった。
庭に白いハイビスカスが咲き始めたら、夏がもうすぐそこまでやってきている合図。
お隣さんから、畑で採れたばかりのスモモをいただいて、さっそく少し食べてみたら、まだまだ酸っぱすぎた!
気がつけば、また同じことをやっているような。
毎年のことのはずなのに。
忘れていた季節の驚きにふと立ち止まる。
スモモはもう少し時間をかけて、甘さが深まるのを待つことにしよう。
ジュエリー作りも、島の時間に寄り添いながら、ゆっくりと育んでいこう。
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