
タッチを加えるごとに、その手触りを変化させていく。
金属を扱う手作業は、どこか生きものと向き合っているようで、面白い。
プラチナをリング状に整えたあと、表面を金槌でコンコンと打ち付けていった。
ぐるりと一周、また一周。
表面と側面に凹凸が現れるまで、均一な力をしっかりと加えていく。
こうして圧力を加えると、プラチナはきゅっと身を引き締めるようにして硬化する。
その変化の中で、リングには温度を帯びた“動き”のようなものが宿っていくのがわかる。
これから長くお使いいただく結婚指輪なので、しっかりと丈夫に仕上げていきたい。
屋久島で出会ったおふたりと、屋久島でお会いして始まった結婚指輪作り。
小さなリングではあるけれど、プラチナには確かな重さがある。
同時に存在する硬さとやわらかさは、大地から生まれた金属ならではの、深く有機的な質感なのだと思う。
その手触りがやさしく響くように、リングを丸いフォルムに削り出していく。
視覚的な美しさと、日々のつけ心地。
その両方を丁寧に重ねていくと、ラウンドシェイプというかたちが、いつの時代にも選ばれてきた理由が、ふと腑に落ちてくる。

削り出し作業の前に、庭先の花々に癒されておく。
やわらかな力強さが、いつもここにある。

鉄工ヤスリを、目の粗いものと細かいもの2本。
それぞれを使い分けながら、ここまで一気に削り出した。
滑らかで途切れのないラインを生むためには、途中で手を止めないことが大切になる。
ラウンドシェイプのリングを造形していると、いつも白いシャツやイチゴのショートケーキのことを考える。
シンプルで普遍的なフォルムだからこそ、そこには作り手のスタイルやアイデンティティが強く反映される。
わたしの場合、それは、緑に囲まれた島での暮らしそのものであるのかもしれない。
その日々を快適にしていくように、リングのデザインもより良いものに磨き上げていきたい。
このあと、ヤスリを精密なものに持ち替え、細やかにバランスを整えていく。
目立たない工程ではあるが、多くの時間と集中力を要する作業だ。
なんともゆっくりとしたペースのものづくりだけど、
島のリズムに合わせて、少しずつ、ふたつのリングが育まれていく。
今はそのような時間とともにあることが、楽しい。

夕暮れ時には、オレンジ色に染まる雲を空に見上げた。
日も長くなってきたなあと思いながら、
ずっと遠くを眺めて、目をゆっくりと休ませていた。
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