
突然の雨。庭先に咲いた白いハイビスカス。南国の青い空。
鮮やかな夏の気配に包まれながら、ツワブキの指輪を作っている。
島の季節とともに、少しずつリングが花の形をなしてゆく。
それは、まるでひとつの花が咲いてゆくような時間なのかもしれない。
真夏の暑さの中でも制作に集中できるよう、アトリエの空調は程よく整えてある。
糸鋸で7mmほどの小さなプラチナの花をかたどり、ドリルやピンセットを手に、少しずつ細部を整えていく。
酸素トーチの炎に包み、1000度を超える熱を加えながら、金属同士を繋ぎ合わせていく。
花の中央には、イエローサファイアを添えるための下穴を削り出しておいた。
目指しているのは、庭先で眺める草花たちのような、力強く繊細な佇まいだ。
「今年の10月上旬にプロポーズを考えています」と、彼から婚約指輪の制作をご依頼いただいたのは、梅雨の名残を感じる、蒸し暑い夏の始まりだった。
「自然好きの私達にぴったりだと思いました」
海を越えて遠くに暮らしているけれど、大切な気持ちを分かち合える仲間ができたようで、嬉しかった。
おふたりの新しい暮らしの始まりを記念するジュエリー作りをおまかせいただき、本当にありがとう。
プラチナでかたどった小さな花は、ゴールドの細いリングと組み合わせることになっているのだけど、
ふたつが美しく、そして丈夫につながるよう、花の裏側にプラチナの細い線で支柱を作っておいた。
完成すれば見えなくなる、小さな部分だ。
けれど、こういうところこそ丁寧に作り込んでおきたい。
この裏側の作業に丸一日ほどをかけ、無事に序盤の工程を終えることができた。

庭先で、そのシルエットを眺めてみる。
手のひらをぱっと広げるように咲く花が好きだ。
冬の初め、少し寒さを感じるようになる頃、庭の片隅にポコポコと姿を見せる黄色い花。
ツワブキを眺めていると、朝の木漏れ日のような、あたたかな気持ちに包まれる。
おふたりの婚約指輪もまた、日々に明るく寄り添うものになればいいと思う。
激しく降り続いた雨は、いつの間にか上がったようだ。
夕暮れ時の空には、オレンジ色に染まった雲が足早に流れている。
雨上がりの庭先に出て、深呼吸をする。
どこかで雨宿りをしていた猫が、近くを通り過ぎていく。
18時近くになり、外の空気も少しだけ涼しく感じられた。
夜までにもう少しだけ作業を進めておこうと、アトリエに戻る。
夏の一日は、こうして何気なく過ぎてゆくのだった。


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